劇場公開日 1970年6月19日

「ヒッチコックという先入観を捨てて観れば大変に良くできたスパイ映画だ」トパーズ(1969) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヒッチコックという先入観を捨てて観れば大変に良くできたスパイ映画だ

2019年2月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

007シリーズの大当たりを前にして、ヒッチコックが本物のスパイ映画の手本を見せてやろうと言う意欲を感じる
ヒッチコックには珍しいユーモアもウイットの一かけらも無い、シリアスかつシビアな内容
肌合いは劇画ゴルゴ13に近い
スパイの情報の受け渡し手法、各国情報機関同士の関係性など極めて正確な取材に基づいたもので後年のフォーサイスのスパイ小説を思わせる

ヒッチコックの映画に抱くパターンを期待して本作を見ると欲求不満になるだろう
しかし、ヒッチコックという先入観を捨てて本作を観れば大変に良くできたスパイ映画だと評価が別れるだろう
流石はヒッチコックと唸るシーン、ショットも多い
花屋の温室、大通りを隔てたホテルのロビーでの言葉が聴こえなくても観客に意味を通じさせるシーン
キューバの美人スパイの死のシーンを真上から撮り彼女のドレスのスカートが血糊のように広がるショット
これらは特に印象深い

1962年秋のキューバ危機を巡る米ソ仏のスパイの物語
主人公はフランス情報部のワシントン駐在員
容姿は二代目ジェームス・ボンドのジョージ・レーゼンビーを思わせる
当時フランスはまだNATOに加盟していた
脱退したのは本作の時代の4年後1966年のこと
そして2009年に復帰している
それだけの時月が流れ去った
だから、この物語は半世紀以上昔の物語に過ぎないのだろうか?

冒頭のモスクワの軍事パレードはつい最近北京や平壌であったものと瓜二つ
キューバ危機は北朝鮮の核危機と相似形だ

同じ物語が今日本であってもおかしくないのだ
本作は半世紀の時を超えて現代性を帯びてきたのだ

あき240