特攻サンダーボルト作戦のレビュー・感想・評価
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個人的にはイマイチだったけど・・・
飛行中ハイジャックされた時に老婆が「どういう冗談なのよ?」とピンと来ないセリフを言ってたのが何か印象に残ってしまったが、実話ということで気を取り直して鑑賞しました。重い話でも必ずワンクッション置く「小言」のようなセリフってありますからね。
目的地へ向かう途中、妊婦を機内から下ろしてあげる良心があったのは救いですね。それ以外は特に印象に残らず到着した。乗客は降りてもターミナルに残される展開でしたが、事の重さは伝わりにくい雰囲気で進んでいった印象。それは「小言」、ちょっとした軽い会話が結構多かったのでピンと来なかった。
50分過ぎ。夫婦で奥さんが旅券が違うことからユダヤ人じゃないと判断されたのか離れ離れになったり、逆らう若者に暴力したり・・・ようやく危機感ある展開になった。先に解放された人はディカプリオ「タイタニック」と同じで女・子供・老人...男性は気の毒だよ、人間の生命上、仕方ないことなんでしょうが・・・。
ヤフェット・コットーが自慢げに色々話してるシーン、訓練~作戦への段取り、お偉いさんの議論、銃撃戦を経て人々の安堵の表情...正直、引き付けられる部分が少なく退屈に思えてしまった。
若い年代が観た場合、雰囲気・ノリといった演出的な面でどうしても古さを感じる可能性が高い気はする。個人的にはイマイチだったけど、実話という重みを踏まえて観れば、感じ方も違ってくると思う。
スタンダードサイズのテレビムービーだが、カッシュナー監督の折り目正しい演出と多彩な配役で見ごたえあり!
続編としてもシリーズ内でも傑出した出来の『スターウォーズ帝国の逆襲』で監督してその名が知られるアービン・カッシュナー監督だが帝国以前の作品は観ていないので今回レンタルで鑑賞。
実録風のタッチで始まり、乗客の様子や乗り込んでハイジャック犯が判るまでの描写も手堅く演出されており引きつけられる。
特に前半はハイジャックされた機内とイスラエル政府など状況を交互に見せる部分もじっくりと腰を据えて見られる。最近の映画のテンポとカット割に慣れているとスローに感じかもですが。
映画ポスターなどメインビジュアルで主演に見えるチャールズ・ブロンソンは、かなり後に素っ気なく登場するのリアルでいい。
ちなみにキャストクレジットでは最後の特別枠で今回は、珍しく軍人のブロンソンが直接的に人を殺さないのは、『おませなツインキー』以来では?と思うけどあの作品もブロンソンと女子高生のラブコメだと?と驚嘆するオーパーツな作品で新鮮?
普段の主演の映画ではいつも1000人くらいブ殺すのに(誇大誇張)
他にもイスラエル首相役のピーター・フィンチや非常になり切れないドイツ人テロリストのホルスト・ブルックスや冷静沈着な乗客のマーティン・バルサムなどのキャストも豪華で魅力的。
バルサムと仲良くなり信頼される金髪少女が、アレ?何処かで見たな?と思ったらジョン・カーペンター監督のクールな傑作『要塞警察』(ハワード・ホークスとゾンビ物をミックスした映画)で、ストリートギャングにいきなり惨殺される女の子役のキム・リチャーズだった。
要塞警察のちょっと前にディズニー映画の主演をした有名子役のキム・リチャーズを血塗れで殺すのは、結構思い切った起用だなぁと思うが、こんな子供に手を掛ける極悪非道なギャングならいくら殺しても観客の心が痛まないカーペンター監督の配慮かな。(S気が強いだけかも)
かわいいフリして人を食べる、わたし「待つわ」なウガンダ共和国の人食い大統領アミンを、ヤフェット・コットーが食えない道化的独裁者として演じているのも面白い。
当時新人だった若き日のジェームズ・ウッズもイスラエルの兵士役で印象的。
この頃のウッズは、鋭さより線の細いちょっと神経質に見えるが優秀な青年兵士を好演。
少し後に主演した現役警官作家で有名なジョセフ・ウォンボー原作(フライシャーのセンチュリオンの原作者)の『オニオン・フィールド』で、警察官を殺して刑務所に入ったが勉強してムショ内の法律相談役になるチンピラ役あたりから、鋭い貫禄も出ていたと記憶してる。
ジェームズ・ウッズは、その前にもジョセフ・ウォンボー原作でロバート・アルドリッチ監督の『クアワイヤー・ボーイズ』にも出演していたが、スターになったあとにジョセフ・ウォンボーを明らかにモデルしたと思う、現役警官作家が組織をリストラされた殺し屋と共に犯罪組織に追い詰める設定が絶縁なラリー・コーエン脚本で活劇職人ジョン・フリン監督の傑作犯罪ミステリー『殺しのベストセラー』でこれまた印象的な殺し屋役を怪演している。
撮影と演出面でも手前と奥にピント合わせる為の可変レンズ(デ・パルマが良く利用)を使いイスラエル首相の苛立ちを象徴するペン先を揺する手元と説明をする官僚をワンカットに収めた場面やブロンソンと上司のジャック・ウォーデン表情を均等に捉えた場面などで効果的に使われている。元は小さなテレビ画面用映画(昔の家庭用テレビは今のような大画面の物は殆ど無い)なのに手を抜かずに映画として撮影している。
予測訓練もリアルで、特殊部隊サイェレット・マトカルの出撃場面時の空港では、音楽と素早く滑空するカメラワークにより一気に映画が躍動感に溢れて戦闘活劇へとギヤが入る演出と構成もお見事。
エンテベ空港にある人質が監禁されているビル内での銃撃戦も地味ながらのリアルなアクションを見せてくれる。特にスティーヴン・マクト扮するヨナタン・ネタニヤフ中佐(実在の人物で前イスラエル首相の兄)が、小型のイスラエル製サブマシンガンのウージーの畳んでいたストックを伸ばしてセレクターをセミオートに切り替えて近距離精密射撃を行う場面は、ガンマニア必見。
それ以外にも印象的なのは、当時の極小国であったイスラエルでは家庭のリビングぐらいの場所で与野党の会議を開催している場面なども興味深い。
当時のフランス首相の補佐官は後の大統領のシラク?
作戦が成功して部隊と人質が母国の空港に帰還する場面なども定番ながらを抑制して演出してありイデオロギーなどあまり感じられない。
ただ、エンテベ空港で別れて現地の病院に入院した人質が行方不明なる件は、実話で重い余韻を残す。
スタンダードサイズのテレビムービーだが、スケールや多彩な豪華キャストを使い、いわゆるモブのキャラの表情までも抑えた、カッシュナー監督の的確で折り目正しい演出が見事な作品でオーソドックスな映画が見たい人にはオススメ。
ちなみにキングレコードのDVDにはテレビ放送時の日本語吹き替え版も付いておりブロンソンには、お馴染み大塚周夫や中村正や安原義人などの名声優が揃っているので音声は、そちらで楽しみながら字幕を表示するとテレビ吹き替え版ではボカされている政治的部分の解釈の違いも判り興味深いです。
隠れた名作です、手に汗するサスペンスは群を抜くもの
面白い!そう言えば実話であるだけに不謹慎だとのそしりを受けるだろう
しかし本作の手に汗握るサスペンスと緊迫感、ラストシーンでのカタルシスは超一流の軍事サスペンスでフォーサイスの原作であるかのようだ
感動すらするほどに
中央アフリカはウガンダのエンテベ空港を舞台にテロリストから約100人もの人質をイスラエル軍が急襲して救いだす物語をハイジャックが始まる前から描く
40年以上も昔の遠い国のお話の様に思うだろう
日本人には余り関係のないお話だと
とんでもない
日本人にも関係があるどころか、この事件が起こった遠い原因は日本にあり、その責任の一端を感じなければならない
本作で描かかれた事件は1976年に発生したエンテベ空港奇襲作戦のこと
その前年1975年クアラルンプールの在マレーシアのアメリカとスウェーデンの大使館を日本人テロリストが占拠して職員ら約50名を人質として、日本国内の刑務所に収監中の囚人解放を要求した事件があり、日本はテロリストに屈した前例を作っているのだ
テロリストとは交渉しないというのは簡単だ
ではどうするのか?それが本作のテーマである
1972年ミュンヘンオリンピック事件では、ドイツはテロリストに対抗しようとして大失敗をおこし人質を全員死亡させている
だからテロリストの言いなりになるのか?
日本の選択はそれであった
それは戦争するくらいなら殺されようという思考と同じではないだろうか
人質の命を救うために、それ以外の人々を次の危険にさらしているのだ
本作で描かれた対テロリストの人質解放の軍事オプションの成功事例が呼び水となり、翌年1977年のルフトハンザ航空181便ハイジャック事件では、ドイツもミュンヘンオリンピック事件を猛省して整備した特殊部隊を舞台となったアフリカはソマリアのモガディシュ国際空港に出動させ武力を持ってテロリストを排除し86人の人質を全員生還させている
だが日本はどうか?
その数ヶ月前にダッカ日航機ハイジャック事件が起こり、またもテロリストに屈して次のハイジャックを誘発しているのだ
その時の責任者である福田首相の人の命は地球より重いとの発言はあまりにも有名だ
一国の首相がそのような甘いナイーブな言葉をはいていたのだ
その言葉を称賛するのか、無責任さに呆れかえるのか
それは本作を観た日本人は考えるべきことだと思う
本作で描かれるイスラエルのラビン首相も苦悩する
テロリストに屈することも視野に考え迷う
しかし彼は戦うことを決断する
野党の党首もその決断を支持する
日本でいうなら国会の委員会では紛糾するも全会一致でテロリストとの戦いを支持するのだ
それができるのはなぜか?
イスラエルだから?ユダヤ人だから?
そんな特殊な訳がない
自国の国民の生命と自由に責任を持つ
それが政治家にとりいの一番であるからだ
当たり前のことなのだ
そしてそれを実行できる、実力組織と装備、訓練を積んだ隊員がいて初めて国民の安全に責任を持つことができるのだ
さて21世紀の現代の日本は同じ事が起こった時、またもテロリストに屈するのだろうか?
隣国には一国がテロリストの行動をしている国があるぐらいだ
まして来年はオリンピックだ
日本もその後警察も自衛隊もテロリスト対策の組織も装備の整備も進んだ
実力組織の能力は世界水準にあると思う
しかし、政治はテロリストに戦える意識と覚悟を持っているのだろうか?
いざというときに使えないのなら、テロリストには屈しないというのは口だけということになりかねない
まして野党や国会が全会一致で国民の生命を一番に軍事救出作戦を支持することができるのだろうか?
暗澹たる思いが広がる
イスラエル軍は決して外征軍ではない
本土防衛のみに徹する国防軍だ
その意味で自衛隊に近い性格の軍だ
それが何千キロもの離れた他国で軍事行動を緊急に行える力を発揮してみせた
果たして自衛隊に同じことを今この瞬間要求して実行できるだろうか
装備もそうだがそれだけの柔軟性、即応性、そして指揮官の胆力、日本人の命を守り抜く使命感が
イスラエル軍に負けないことを示せるだろうか?
出来ませんということになるのではないか
日本人を見捨てる決断になるのではないかと危ぶんでしまう
もしかしたら近い将来北朝鮮へ拉致被害者救出作戦をする日がくるかもしれないのだ
米軍に任せる?
自国民の救出をするのは自国が責任を持たずしてそれが独立国家と言えようか
本作を観て、このような日本の改憲論議に及ぶ事柄までにも考えが渦巻くのだ
隠れた名作です
本作で作戦を指揮する将軍役のチャールズ・ブロンソンは見事な配役で、彼のプロフェッショナルな雰囲気は、その将軍がその困難な作戦を計画し実行できる実力と経験を十二分に持つことを人目で分かる表現力を示してみせている
きっと日本にも彼のような指揮官がいるだろう
その部下達も猛訓練に耐え意気盛んであろう
しかし彼らにその役割を与える政治の決断力はあるのだろうか?
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