「今まで観てきたどんなホラー映画よりも怖いコメディ映画」トゥルーマン・ショー といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
今まで観てきたどんなホラー映画よりも怖いコメディ映画
もし自分の生活全てが生放送されていたら。自分の周りの人々が全員エキストラで、身の回りの出来事は全てドラマ的な演出だったら。
考えるだけでも恐ろしいストーリーです。
下手なホラー映画よりよっぽど怖いですね。
確かに綺麗な奥さんと不自由しない暮らしが保証されているが、その生活の一部始終が記録され公開され、どこの誰かも知らない人々の笑いの種になる。自分ならば到底耐えられません。
また、作中に登場するトゥルーマンショーを観ている視聴者に対して私は「無自覚な悪意」を感じていました。作り物の人生を送るトゥルーマンを観ていることに何の疑問も罪悪感も感じていないのです。一人の男の人生を支配し、見世物にして楽しんでいるという自覚が全く無いのです。ラストシーンでトゥルーマンが作り物の海を渡り外の世界に出て行くシーンで視聴者たちは「外に出られて良かった」と歓喜に沸くシーンがありますが、そもそもトゥルーマンが作り物の世界に閉じ込められていたのは「視聴者がそれを望んでいたから」であり、それなのにトゥルーマンが外に出られて喜んでるという描写には私は心底恐怖を感じました。この恐怖は、今まで観てきたどんなホラー映画よりも群を抜いて凄まじいものでした。
1998年公開の映画ですが、プライバシーも無くネットに晒される現代のSNS文化にも通じる部分があり、我々も他人事ではないなと感じます。
また、この映画は人によって感じ方が全く異なる作品です。
私はこの作品を「どんなホラー映画よりも怖い」と評しましたが、この映画を観た方の中には「外の世界に出ようとするトゥルーマンを視聴者目線で応援しました」というレビューも少なくなく、「トゥルーマンが閉ざされた世界から羽ばたくまでの物語」と捉えている人もいるようです。私にとっては「悪意の監獄に囚われたトゥルーマンが仮初の世界から抜け出す物語」くらいの印象だったので、色々な物の見方であったり感性の違いが分かる作品ですね。観たことある人たちで語り合うのも面白いですよ。
本当に面白いので、オススメです。