「60年前の映画なのに構えずに見れる」天井棧敷の人々 あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
60年前の映画なのに構えずに見れる
この映画は文字通りの歴史に残る名作の中の名作で、第二次世界大戦中にナチスドイツの占領下にあったフランスで、約三年の歳月を使って撮影された作品です。近所のミニシアターで二年前に上映されました。
ストーリーは二部構成で、簡単に言えば貧しさゆえに愛よりもお金をとった人々の悲しいラブ・ストーリー。ラブ・ストーリーといっても、今の恵まれた時代にあるものより、展開はリアルです。貧困の生活では、愛ですら権力や財力を前にすると、一瞬にしてかすんでしまうのですから。フランス映画の精神の原点は、この映画にあるような気がしました。ぎりぎりに追い詰められると、愛は必要条件の一つであるが、十分条件ではないのだ。そして、それが人生というもの。ということになるのでしょう。
モノクロ映画を見るといつも思うのは、画面の力がカラーよりもあるということ。それは時として吸い込まれそうなくらい危険なほどですが、本作のような重いストーリーでは何故かホッとする。マルセル・カルネ監督はじめ撮影に関わった人々の、画面の細部にいたる細部にまで心を砕いた跡がうかがえます。
画面に語る力を秘めた映画つくりをできる人は、この人とフェリーニ、タルコフスキー、そしてスピルバーグくらいでしょう。
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