手錠のままの脱獄のレビュー・感想・評価
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テーマを表現しきれていないストーリー
まだ黒人差別が激しかった時代。そういう時代に、白人と黒人が手錠に繋がれたまま脱走し、友情を深めていくという設定とテーマは面白い映画。ただ、肝心のストーリーはあまり面白くない。
具体的には、二人の感情の変遷の描き方がいまいちだ。彼らが対立していた状態から友情が芽生えていく過程にフォーカスしてストーリーを作るべきなのに、そこに納得感を感じさせるエピソードがあまり出てこない。その割に脱獄犯の白人と主婦の恋愛パートが中途半端に長くて、肝心のテーマがなおざりになっているように思う。
似たような種類の映画だと『グリーン・ブック』がある。こちらもテーマは似ている映画だが、敵対意識のある白人と黒人との間に友情が芽生えていく過程にしっかりとフォーカスしたストーリーで納得感がある。製作年代が離れ過ぎている映画なので単純に比較できない部分はあるにせよ、『グリーン・ブック』と比較してみても今作はいまいちだった。
「招かれざる客」の域にはまだ遠い、クレーマー監督の発展途上的作品か…
昨年再鑑賞して改めて感銘を受けた
「招かれざる客」にテーマ的に繋がる作品
では、との意味合いで初めて鑑賞したが、
その期待に応えてもらう結果には
ならなかった。
そもそもが、はじめから白人と黒人が
人種的に反目しあっている感じが僅かだし、
当時の白人にありがちな
上から目線的に黒人に接したり、
黒人にもその観点で反発しているようにも
見えないから、
“見えない手錠”に進化するまでの
次第に友情が芽生えるとの徐々に感が
解説のようには感じられず、
「招かれざる客」的テーマ性が弱いままの
展開に戸惑ってしまった。
理性的な対応を徹底する保安官の存在が
救いではあったが、
最後に訪れた家の母子が
最初から彼らに恐怖を感じない描写や、
子供を捨ててまで白人脱獄囚と一緒になろう
とする母親像の設定が御都合的に感じる。
また、白人脱獄囚のその母親への
「寂しさ・むなしさを涙で埋めるのではなく、
夢で」との科白も唐突感が拭えない。
キネマ旬報第13位と評価された作品だが、
結果的に、
「招かれざる客」の域にはまだ遠い、
クレーマー監督の発展途上的作品
のように思えた。
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