「普通の恋愛物語だが、オードリーの魅力が際立つ」ティファニーで朝食を Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
普通の恋愛物語だが、オードリーの魅力が際立つ
総合:65点
ストーリー: 60
キャスト: 75
演出: 65
ビジュアル: 70
音楽: 75
その日暮らしをするオードリー・ヘプバーン演じる美しいホリー。貧乏という設定の割りには洗練された華麗な衣装に身を包み、家賃の高いニューヨークでもリビングにベッドルームのついた部屋に住む。そして業界人やお金持ちとの派手な付き合い。一体何をしている人なのかと思いきや、刑務所に行って伝言を伝えるだけなどという怪しいことをしてわけのわからない大金を得ている。彼女は基本的に得体の知れない怪しい快楽主義者で物質主義者なのだ。その美しさを武器に上流階級に接触してお金持ちを虜にし、自分も上流階級に入り優雅な生活を楽しむことだけを人生の目標にしている。
そんな彼女が繰り広げるロマンティックな恋愛物語が本作である。そのような怪しくて性質の悪い彼女なのに、普通に恋愛をして普通に収まってしまう、物語としては普通の内容の映画だった。
原作は読んでいない。だがどうもホリーの設定とこの映画のロマンティックな恋愛の内容が一致しないなと違和感を感じていて、ちょっと調べてみるとやはり原作とはかなり異なるようだ。原作では彼女は恋愛に惑わされたりすることなく、最後まで自分の目的を追いかけ続けてブラジルにまで行ってしまい、そのうち行方不明になってしまう。そういう根無し草の破滅型の人なんだろう。
ホリーが生き方を変えずにいきつくところまで行ってしまって観客を置き去りにするのか、それとも恋に落ちてささやかな幸せにとどまって観客を安心させるのか。前者のほうが確かにこの本来のホリーの設定にしっくりとくる。でもそうなればこの物語は格調高くても重く深刻になってしまって、映画としてはこれほど有名作品にはならなかったようにも思える。高尚な文芸作品にはならなかったが、誰でも見られるわかりやすい恋愛コメディになった。
やはりこの映画の見所はオードリー・ヘプバーンの存在だろう。初めて見たときは意識しなかったが、原作ではホリーは娼婦同然ということだそうだ。彼女はお金持ちに体を売って生活をしている。だがそのような暗い部分を感じさせない、猫のように自由奔放に生きる女を魅力的に演じている。そのせいで雰囲気も軽くのびのびとしたものになっている。吹き替えなしでムーン・リバーを歌うオードリーの場面がお気に入り。