劇場公開日 2022年11月4日

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「殺人者にも身勝手な一分の理」殺人狂時代 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5殺人者にも身勝手な一分の理

2013年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、CS/BS/ケーブル

知的

難しい

総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:60点|音楽:60点 )

 殺人は犯罪だが大量殺人は国家的英雄。戦争で大量に人殺しをして勝利を収めて利益を得た国家。そんな矛盾をはらんだ社会への風刺や皮肉がこめられているが、こんな主張は今となっては青臭い。困ったことに自分は時代と社会の被害者だから何をやっても許されると叫んで犯罪を犯すものは現代にも多いが、そのような自分勝手な意見は社会から排除されるのは当然のこと。チャップリンがこの後に共産主義的だとして迫害を受けたのは当然いきすぎだが、この内容では当時の赤狩りの吹き荒れたアメリカでは目を引いてしまうだろう。その主張に特に共感する部分はない。
 だけど殺人狂でありながら家族思いで、自分は自分の仕事をしていただけという身勝手ぶりが、殺人者の浅はかな理論づけとしては面白い。結局殺人者は殺人者なりの理屈がある。それが社会から見れば異常であっても、彼らにとっては立派な理由なのだ。殺人を楽しむ根っからの異常者ではなく、知性を持った社会人が自分を正当化する理由を勝手に作り出していくのは気分が悪いが、それが殺人者の姿の一つなのだと思えば興味深い。そして殺人をとりあげた作品ながら、女を縄をかけてもなかなか邪魔が入り沈められないとかといった軽快な演出が、作品を深刻になりすぎずあっさりとしたものにしてくれている。

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Cape God