「小粋なフランス犯罪映画を観たいなら、本作で決まりです」地下室のメロディー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
小粋なフランス犯罪映画を観たいなら、本作で決まりです
名作「死刑台のエレベーター」と題名がよく混同されがちです
死刑台のメロディーとか地下室のエレベーターなんて具合に題名が入り混じって、あれ?どっちだっけによくなります
だってどちらの作品もエレベーターが重要なシーンになりますし、メロディーもどちらの作品でも印象的なんですから
あちらは1958年の巨匠ルイ・マル監督の作品で、マイルス・デイヴィスの音楽が特に有名です
一方本作は1963年のアンリ・ヴェルヌイユ監督の作品です
こちらも音楽で有名
映画音楽全集には入っていることはあまりないのですが、ワンフレーズ聴けば誰もが聴いたことがある!となるはずです
コマーシャルにも使われていました
小粋なタイトルバックだけでなく、劇中でも様々なアレンジで何度も使われます
そしてなんと言っても、本作の最大の目玉はアラン・ドロンとジャン・ギャバンというフランス映画界の二大スターの共演と言うところです
アラン・ドロンは28歳、ジャン・ギャバンは59歳です
アラン・ドロンが素晴らしくカッコいい!
カンヌの超高級ホテルに金持ちのプレーボーイの扮装で現れるシーンの男前ぶりは男でも惚れ惚れするほど
カッコいい、アラン・ドロンを観たいなら「太陽がいっぱい」と本作でしょう
ジャン・ギャバンの市川千恵蔵みたいな渋い重厚な迫力も凄いものがあります
二大スター共演でも、アラン・ドロン
とジャン=ポール・ベルモンドが共演した
1970年の「ボルサリーノ」よりはるかに面白いし、二大スターの魅力が引き立っています
終盤で観念したフランシスは現金の詰まったバッグふたつをプールに沈めます
バックを一時的に隠そうとしたのでしょう
そんなことしても、やがてプール客が増えてすぐバレます
しかしその後のオチのニクいこと!
いや、もうどうしょうもないと観念して、大金は諦めて敢えて騒ぎを起こして逃げるきっかけにしようとしたのでしょうか?
でもそこまでフランシスは頭は良くないのは確かです
シャルルの驚愕と自分の人選の誤りへの後悔がない交ぜになった表情がサングラスをして微動だにしなくても分かります
ジャン・ギャバンの演技力が半端なく凄いです
二人は騒ぎに乗じて、ホテルから逃げおおうせたのでしょうか?
なんて野暮なシーンはなく
プール一面に浮かぶ札束の映像に、fin の文字が控えめにでるのがまたカッコいい
猛暑でもうどこへも出掛ける気も起こらない毎日
カンヌの高級ホテルのプールでのシーンは観ているだけでも楽しいシーンです
序盤は南仏地中海の真夏の太陽の暑さ
夜の蒸し暑さを映像から感じます
でも終盤は夏ももう終わり、涼しい秋風が吹いているように感じます
二人にとって夏は終わってしまったのです
見事な演出です
小粋なフランス犯罪映画を観たいなら、本作で決まりです
蛇足
1964年の日本映画「御金蔵破り」は本作の翻案です
もう一つ
池波正太郎の鬼平犯科帳の盗賊の元ネタは本作かも?
大店のお屋敷の図面を入手してなんてお話がありました