「影画的反戦映画」誓いの休暇 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
影画的反戦映画
戦争で手柄を上げ、数日間の休暇をもらった若い兵士が故郷の母親に会いに行く話。
いったん戦場を抜け出した兵士の行方なんか誰にもわからないというのに「数日以内に帰ってこい」という上官命令を死守しようとするアリョーシャ少年はちょっと律儀すぎるんじゃないかという気もするが、それが誇り高きロシア兵としての矜持なのだろう。
とはいえまだまだ体も心も少年のアリョーシャは、戦争の外側にあるさまざまなできごとに心を動かされる。貨物列車で出会った同世代の女の子とのやりとりは何とも等身大で微笑ましい。脚を失った男の荷物を持ってやるシーンも印象的だったな。
誰に対しても優しく振る舞いすぎるアリョーシャは、そのせいで何度も列車に乗り遅れてしまう。挙句の果てには線路が爆破され、通りかかったトラックの運転手に故郷の村まで送り届けてもらうことに。
村へ着いた頃にはもう折り返さなければいけない時刻。アリョーシャは母親と刹那の再会を果たすと、すぐさまトラックの荷台に乗って去っていく。母親の痛切な表情と、村から伸びる美しい一本道のビジョンが強く心に残る。
登場人物にしばしの日常を経由させることで影画のように戦争の悲惨を描き出した反戦映画の傑作だった。
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