「震えた!」ダンシング・ヒーロー まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
震えた!
バスラーマン監督の30年以上前の作品なのですが、最初は全く情報無いまま鑑賞しました。映画が始まってしばらくは、独特の雰囲気とノリがあるため少し困惑。これは…コメディか?ミュージカルか?俳優の演技も大袈裟でむやみにアップが多い。どういう気持ちでこれを見たらいいんだ…失敗したか??と何だかビミョーな感じ。
でも、そのまま見続けていると段々じわじわ~と面白くなってきて(こ、これは…いけるかも!?)、パソドブレの稽古をする頃にはまさかの釘付けになり、なんとなんと、クライマックスの場面ではボルテージは最高潮に達し涙が勝手に溢れて止まらなくなり、心は全部嵐のように持っていかれて!ついにラストは矢吹ジョーさながら燃え尽きて真っ白になれる映画だったのでした。
映画の中で、競技社交ダンスは厳格な規定があって型やルールを守ることを重視されるものとして描かれ、それとは対極的に粗野で荒々しく情熱的な踊りなのがパソドブレ。主人公はパソドブレに触れ、ヒロインと共にダンスを重ねるうちに、なぜダンスを踊るのか?自分は本当はどんなダンスをしたいのか?自分らしく生きるとは?人を愛するとは?など根元的な問いかけに何度も迷いながら揺れながら、一歩一歩進んでいく。その姿に、鑑賞者は自分の人生を振り返らずにはいられない。「恐れる者は半分の人生しかない」という格言が何度も出てくるが、勇気をもって何かに挑戦することや、自分のハートに耳を澄ませてひたむきに向き合うことの大切さ。そして、やっぱりダンスは楽しくなくっちゃね!という声がどこからか聞こえて来そうな明るさと、何よりもその圧倒的な熱量で、私たちを楽しませてくれる素晴らしい映画でした。監督バズ・ラーマンの魅力が随所に感じられます。ぜひお試しあれ。