タンゴ・レッスンのレビュー・感想・評価
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I am You.
タンゴだから、で見たが映画そのものが自分の好みで参ってしまった。サリー(主演・監督)の現実はずっとモノクロ。テーブルもシナリオのアイディアを書きつける紙もパリのホテルでのサリーのパジャマも全部が白。美しい。
ブエノスアイレスで映画の撮影場所探しをするパブロ含めた3人の男性ダンサーとサリー。その途上のある一部屋での映像が素晴らしい。壁際の真ん中に大きなソファー、そこに寝そべるパブロ、その両側に一脚ずつ置かれた布張りの椅子にそれぞれ座る男二人。その映像が堪らなく美しい。見ているのは反対側の椅子に座っているサリー。そして4人は部屋から出て「リベルタンゴ」で一緒にタンゴを踊る。4人で自由に踊るタンゴ!幸福感でいっぱいになった。
前半はパブロのダンサーとしての矜持が凄まじくてむかついた。映画監督である自分がダンスの相手に従い続けることはできない、とサリーが言ったのは、最後のぶち切れで本心だと思う。
サリーはパリのサン・シュルピス聖堂を訪れる。そこにあるドラクロワの絵画「天使とヤコブの闘い」の前でサリーとパブロは再会し互いを理解し始める。ヤコブは闘った相手からこれからはイスラエルと名乗れと言われる(創世記32章28節)。だから?二人ともユダヤ人だから?今度は共にシナゴーグに赴くが、パブロはシナゴーグでも教会でも落ち着かない、根無し草だと言う。サリーも無神論者と言ってたから同じだろう。出会うべくして出会った二人。仕事とプライベートは分けたい、自分の仕事領域では自分がリードする。その二人の意気に私はもっともだー!と共感した。
映画「雨に唄えば」はダンサーにとってそれほどオマージュしたいものなのか。この映画でも雨の中で二人はタンゴを踊った。タンゴはいい。観客や他者に見られることを意識せず相手だけに集中できる。相手のちょっとした動きを感知してこちらも答えてずーっと踊れる気がする。最後に二人が川沿いを延々と踊り進む背景に流れる曲はサリーが作詞・作曲し自身が歌う「I am You」、チェロはヨーヨーマ。
タンゴの世界は色にしたら黒。サリーが脳内で思い描く映画シーンはカラーで、3人の女性モデルのドレスは激しく叫ぶ色だった。
踊りたい
大昔だけど、ちょっとだけタンゴをかじった僕。この映画、久々にアツくなりましたね。
また習いたい!
タンゴは男女の駆け引きが大胆なので面白いんです。
夢中になってタンゴにのめり込むサリー。でもイケメンのパブロは稽古をつけてやる程度にしか思っていなかったんだな。
こんなに踊ることが好きなのに素養のなさを突き付けられてパートナー解消されるって、悲しいよね。傷つくよね。
でもこれがプロの世界の掟というものなのだ。
身勝手けっこう。足をひっぱる存在とは決別して更なる高みのパートナーを見つけなければ芸術家は身を亡ぼす。
オーディションを題材にした映画はいろいろある。
しのぎを削るトップ争いのなかでふるい落とされてゆくダンサーの悲哀は、多くの作品になっているしなあ。
結局、サリーとパブロが甘いラブストーリーに落ち着かなかったところが、この映画がまがい物でなかったことの証かもしれない。
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タンゴつながりでオススメは
「ラスト・タンゴ」。
50年も一緒に舞台を踏みつつも別離れて生きるアルゼンチン伝説のペア、マリアとファンのドキュメンタリー。
あんなにも情炎を絡ませ体を密着させて踊るタンゴが、強く相手を惹き付けた次の瞬間その相手を突き放す。悲しいかなこんなにも遠い男と女のディスタンスをタンゴは踊るのだ。
それを魅せてくれる、この2本だ。
踊ることは生きること…
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