「彼らの七日間戦争」タップス kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
彼らの七日間戦争
実際に何日間の籠城だったか数えてませんが、世間体やら、飽きがくるとか、兵糧攻めに耐えられるかとか、やっぱり一週間くらいが限界なのだろう。彼ら学生は最年長の指揮官ブライアン(ティモシー・ハットン)を中心に、閉校反対、心臓発作を起こしたベイシュ将軍の安否確認、そして大人たちへの反抗のため学校を占拠し、籠城を行ったのだ。
ベイシュ将軍(ジョージ・C・スコット)も英雄となった者、名誉の死を遂げた者を世に送り出した輝ける栄光を胸に秘め、名誉を重んずる指揮官へ将来を託す気分だったのだろう。1年後には陸軍幼年学校も閉鎖。士官が約束された若者を教育できたことに満足げだったのだが・・・若者たちとのトラブルに巻き込まれ、一人の青年を誤射してしまい事態が急変するのだった。
世間ではベトナム戦争への反省から「狂気」とまで言われた『地獄の黙示録』などの映画や本が氾濫していることに沈痛な面持ち。「実戦で狂気なんてない」と言いつつも閉校止む無しとも考えていたベイシュだったが、そこへの誤射事件である。若者は死に、彼自身もショックから心臓発作を起こしてしまう。
立て籠りを決めたブライアンは補佐役のアレックス(ショーン・ペン)やショーン(トム・クルーズ)とともに下級生たちを指揮するのだが、生っちょろい大人への反抗なんてものじゃなく、倉庫にあったマシンガン、手りゅう弾などの武器を所持しているのだ。やがて、警官隊や本物の軍隊が学校を取り囲むのだが・・・といった内容。
学校のTVルームでは映画『MASH』が流れていたりするのですが、「そんなもん見るなよ~」などとヤジが飛んだりする。上級生たちは世間がどう見てるのか気になるためニュース番組を見たい一心。学外では毎晩のように親たちからのメッセージが流れるといった具合で、大人たちは平和的に解決しようとしているのが手に取るようにわかる。やがて「彼らはテロリスト」なる意見も聞き、徐々に籠城から離れていく生徒たちも出てくる。リーダーのブライアンも帰りたい者は帰すという優しさも残っているのだ。
籠城事件という珍しい視点ではあるが、明らかにベトナム戦争への反省から反戦作品となっている本作。平和的に話し合う余地も見せていたのですが、学生の一人が大やけどを負って搬送されてしまうし、12歳の少年がこれまた事故のため亡くなってしまうし、ベイシュが亡くなったとことも知り追悼集会も開かれたりする。軍のカービー大佐は「翌朝に投降しなければ総攻撃をかける」と促し、アレックスが「俺たちは勝ったんだよ」と慰め、ついにブライアンも投降する覚悟を決めたのだ。実際、彼らの気持ちが事件を通して世に知らしめることができたことを考えれば“勝った”のだろう。しかし、一人だけ、レッドベレーのショーンだけが、カービー大佐を狙撃、マシンガンで乱射を始めるのだ。
「ビューティホー!」。ショーンの狂気が愕然とさせる。やっぱり戦争は狂気を呼ぶのだ。軍服を着て銃を持てば、誰でもそうなる可能性がある。指揮官が有能であっても狂人は必ず出てくるものだ。そんな狂気を演ずる若きトム・クルーズも名演。ショーン・ペンやティモシー・ハットンも素晴らしい演技でした。
中東の危険地域のドキュメント映像等で、幼き子供たちが銃を訓練させられる悲惨な光景なんかがありますが、陸軍幼年学校なんて結局それと同じなんですよね。しかもアメリカという先進国で。ちなみに日本にも戦時中は存在してたみたいです。