「孤独なトラヴィスの白昼夢」タクシードライバー カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
孤独なトラヴィスの白昼夢
たぶん、名誉除隊ではなく、不名誉除隊となったトラヴィス。海兵隊も嘘だろう。兵役にすら行ってないかもしれない。背中にキズはあったけど。嘘をついてないと生きていられない哀れなトラヴィスは虚実の区別がつかないほどイカれちまっている。華奢でハンサムな若いロバート・デ・ニーロだから成立する映画かもしれない。また、廚二病と言ってしまうと身もフタもない。
両親への手紙に国家機密に関わる仕事についているから住所は言えないとか、大統領候補の秘書のベッティと付き合っていると書くあたりは、映画「バッファロー'66」でオマージュされている。ベッティを Sometimes Sweet Susan という二重人格の女のポルノ映画に誘って見事にフラれる。本当にバカな廚二だ。1975年のこのハードコアポルノ映画を劇中映画に選んだのは分裂したトラヴィスの人格を重ねている意味もあるかも。
いちばん恥ずかしいと思ったのは、未成年の売春婦に説教たれること。廚二の天秤の揺れ幅が滑稽過ぎる。それに比べ、堂々として、トラヴィスを完全に見下しているアイリス(若干13才のジョディ・フォスターがすごい)。壁に貼ってあるジミヘンやミック・ジャガーのポスターやサイケデリックな色とりどりのキャンドルのあかりの雰囲気も少女の部屋にいるようだ。
そして、ポン引き役のハーベイ・カイテルの方が断然カッコいい。右手の小指の爪だけ伸ばし、真っ赤なマニキュア。ほかの指は痛々しいほどの深爪。粋な帽子に白のタンクトップ。ギタリストのCharのトレードマークの帽子はハーベイ・カイテルのこのスタイルに憧れて、真似したのかもと思った。
街頭演説会場にわざと目立つモヒカンで現れる。場当たり的で計画性に欠ける行動。シークレットサービスに追われる。そのあとはアパートに逃げ帰り、白昼夢を見ていたのだとオイラは思う。アイリスの両親から感謝の手紙。ヒーロー扱いされた新聞記事の切り抜き。売春宿の廊下の血はケチャップみたいに薄くて、あまりリアルではなかったのには何か意味があったと思いたい。
マーティン・スコセッシ監督は出たがり。黒人に妻を寝とられた乗客のシーン。コンビニで殺される黒人にだめ押しの暴行シーンもイタリア系移民のスコセッシ監督のこだわりだろう。1976年当時はさまざまな反響があったに違いない。
バックミラーに映る夜のニューヨークの街の光と影、悲しげなトランペットの音が幻想的な世界に誘ってくれる。
45年も前の映画だが、全然そうは思えない。ベトナム戦争からの帰還兵というシチュエーションを取っ払っても、違和感なく観れる暗黒時代になってしまったためかもしれない。Sometimes Sweet Susan を観て、ストレス発散したいね。シヴィル・シェパードも素敵でした。
カールⅢ世さん
コメントを頂き有難うございます。
そうなんです!私も危うく取りこぼすところでした。朝刊のテレビ欄の端( 民放BS欄 )をチェックしていて… 👀‼︎ でした。
小柄で可愛い女の子だとは思っていましたが、目元や表情が…えっ⁉︎…ジョディ・フォスター⁉︎ 実は、再生を止めてスマホで検索したんですよ(笑)
真っ赤な薔薇の蕾が少し開きかけたような( まさに→🌹 )ジョディのキュートな妖艶さは感動的ですらありました ✨