劇場公開日 1966年10月11日

「惜しみなく大地は奪う」大地のうた 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5惜しみなく大地は奪う

2022年3月4日
iPhoneアプリから投稿

インド映画といえば歌に踊りの底抜けにハッピーな印象が強いが、サタジット・レイの映画は暗く苦しい。

貧しい家の少女は日頃から隣家の果実を盗み食いしており、友人のネックレスが無くなったときも真っ先に疑念をかけられた。少女は「盗んでいない」としきりに主張し、少女の母親も「うちの子がそんな高いものを盗むはずがない」と少女を庇う。

それからしばらく後、少女は高熱にうなされる。外では車軸を流すような大雨が吹き荒れ、母親は少女を必死で介抱する。そのさまを戸棚の上のガネーシャ像が事もなげに眺めている。

翌日、少女は天に召される。家は風雨によってバラバラに破壊され、母親は糸の切れた人形のように呆然と座り込む。そこへ運良く、いや、運悪く出稼ぎに出ていた父親が帰ってくる。父親は都会で手に入れた数々の金品を母親に自慢するが、失われた命は二度と帰ってこなかった。

父親は教養に通じており、文学で生計を立てようと画策していたこともあったが、娘の死を受けて「こんなもよが何になる」とノートの束を破り捨てる。教養があろうがなかろうが、惜しみなく人の命を奪っていくのが大地であり自然であり神である。

少女の死後、一家は別の街へ引っ越すことになった。彼女の弟のオプーが戸棚を漁っていると、とあるボウルが見つかった。そこにはネックレスが入っていた。それは少女が友人から盗み出したものだった。

弟はネックレスを掴み取るや否やすぐさま近くの池にそれを捨て去る。そうすることで家族を襲う不幸の連鎖を断ち切ろうとした。少なくとも彼はそう信じて行動した。彼の行動が後にいかなる未来を招来することになるのかは、残る2作品を見るまではわからない。

因果