「タイタニック犠牲者が恋人同士の再会を祝福する。」タイタニック(1997) 孔明さんの映画レビュー(感想・評価)
タイタニック犠牲者が恋人同士の再会を祝福する。
海難事故では抜群の知名度を誇り、処女航海で1,500名以上の死者を出したタイタニック号沈没のドラマを描く。
ジャックとローズという身分違いの男女の恋と、氷山に衝突してから沈没するまでのタイタニック号に乗り合わせた人々の人間ドラマ。
驚くべきはやはりタイタニック号の豪華設備を当時のものに可能な限り近付けて再現したセットにあるだろう。
氷山衝突から船の沈没までを後半とするならば、前半はジャックとローズの2人の恋よりもそちらに目を奪われることであろう。
本番は氷山激突から徐々に船体が傾き始め、逃げ惑う人々がパニックを引き起こしていく中で、
生き延びようと足掻く人・静粛に死を受け入れようとする人・暗い冷水の海に投げ出されて凍死する人と様々な様相を呈す。
タイタニック号の不運は沈没時に船に人数分の救命ボートが備え付けられていなかったこと。
さらには「SOS」救難信号を発信した際にすぐ近くの海域にいた「カリフォルニアン号」「マウントテンプル号」らが
いずれも信号を受信しなかったり、氷山衝突による二次災害を恐れて現場に接近しなかったこと。
そのため、現場から107kmも離れたところにいたカルパチア号が救助に向かったが、船足が遅く現場に到着したのは
沈没から2時間40分も経過した後のことだった。
他にも沈没は船に積んでいた「ミイラの呪い」だの、沈没の10年以上前に事件を予知していたような小説が書かれていたなどという都市伝説の類も含めて、現代まで我々の興味を引く話題に事欠かない。
豪華セットによる船の沈没の描写はいいのだが、その上に乗せたジャックとローズの恋物語はどうにもバランスが良くない。
死に行く多くの人々のドラマと2人のドラマは吊り合いが取れないのだ。
だが、ラストシーンでローズとジャックが夢か現かで再会を果たし、それを事故で犠牲になった全ての人たちが
祝福で出迎えるという引きは悪くないと思う。
