劇場公開日 1983年12月17日

「テーマの描き方が中途半端」大逆転(1983) 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0テーマの描き方が中途半端

2024年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 『人の成功を決めるのは遺伝か環境か』というテーマに惹かれ鑑賞。人の成功を決めるのが遺伝だったら夢も希望も無いので、当然環境が大事という展開になるのだが、その描き方が中途半端で残念だった。

 株や先物取引などで成功するには、十分な知識や経験、思考力が必要で、センスだけでやっていけるようなものではない。にもかかわらず、貧民から富豪になったビリーが、持ち前のセンスだけで成功する展開が安易で面白くない。富豪から貧民に堕ちたルイスも、ただ窮状を嘆くだけで、現状を認めて挽回しようとするような気概を見せない。

 そうではなくて、ビリーは仕事について行くために必死で勉強したり積極的に情報収集したりする。そしてルイスは持ち前のポテンシャルの高さで、小さな商売で起業でもして底辺から這い上がるくらいのストーリーだったら面白かった。人の成功には遺伝や環境の影響は大いにあるが、本人次第で状況はいくらでも変えられるというメッセージ性があった方が、ストーリーに深みが出たはずだ。コメディだからそこを真面目に突っ込んでも仕方無い、とはならないと思う。

 序盤の大逆転が起こる経緯部分の説明と、終盤の悪い奴に復讐しようという展開を大幅にカットして、このテーマを掘り下げる映画だったら良かった。そうなると、映画の内容がそもそも変わってしまうが。

根岸 圭一