劇場公開日 1968年2月24日

「自分の美しさに甘えた女性の男性遍歴を辛辣に描いたスレシンジャー映画の、ジュリー・クリスティの完璧な演技力」ダーリング Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分の美しさに甘えた女性の男性遍歴を辛辣に描いたスレシンジャー映画の、ジュリー・クリスティの完璧な演技力

2022年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波

1974年8月25日
PM1:05よりNHK劇映画「ダーリング」見学。1965年、イギリス映画。監督は「真夜中のカーボーイ」のジョン・スレシンジャー。主演はジュリー・クリスティで、この作品でアカデミー主演女優賞受賞。このクリスティの美しさの変化。ジャーナリストのアシスタントから、モデル、女優と転身し、最後はイタリアの元王族の貴族の後妻とステータスを上げていく。女性の幸せの貪欲なまでの追求。しかし、ラストは後戻りできない男と女の苦い結末を迎える。自由奔放な男性遍歴を辛辣に描いた脚本とスレシンジャーのシャープでテンポ良いタッチの演出が巧い。クリスティの演技は稀に見る素晴らしさ。共演のダーク・ボガードと、今は亡きローレンス・ハーヴェイもクリスティに劣らぬ演技と存在感。不道徳な内容ながら、クリスティの見事な演技とスレシンジャーの適度なユーモアを含んだ皮肉たっぷりの演出に惚れ込む。

(地上波放送だけのこの時代,NHKだけはノーカット、字幕スーパーで提供していた。作品の選定も映画通が好むようなものが多く、とても有り難かった。)

48年振りに見学したが、やはりジュリー・クリスティの演技がいい。後に「ドクトル・ジバゴ」「華氏451」「遥か群衆を離れて」「華やかな情事」「恋」「シャンプー」「天国から来たチャンピオン」そして、「トロイ」「ハリー・ポッター」「ネバーランド」と観て来ているが、25歳で演じたこのダイアナ・スコットの魅力的な悪女は格別である。殆どの女性からの共感は得られず、また奇特な男性以外からは非難されるであろうヒロインを、美しさと演技力で終始魅せる。まだ20代の半ばでの演技とは思えない充実した表現力の豊かさ。主演映画のファーストシーンで撃たれて死ぬ下手な演技まで、うまい。
そして、ダーク・ボガードもその巧さに見直してしまった。特にラストの復讐にも見える彼女への仕打ちをするジャーナリスト、ロバート・ゴールドの複雑な心境を、ダイアナと別れた後に一人車の中で表現するのだが、このシーンの脚本・演出・演技には唸らされた。60年代の退廃的文化と前衛的な演出が、古風で特異な恋愛劇を面白く見せる。

Gustav