ダーリングのレビュー・感想・評価
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自分の美しさに甘えた女性の男性遍歴を辛辣に描いたスレシンジャー映画の、ジュリー・クリスティの完璧な演技力
1974年8月25日
PM1:05よりNHK劇映画「ダーリング」見学。1965年、イギリス映画。監督は「真夜中のカーボーイ」のジョン・スレシンジャー。主演はジュリー・クリスティで、この作品でアカデミー主演女優賞受賞。このクリスティの美しさの変化。ジャーナリストのアシスタントから、モデル、女優と転身し、最後はイタリアの元王族の貴族の後妻とステータスを上げていく。女性の幸せの貪欲なまでの追求。しかし、ラストは後戻りできない男と女の苦い結末を迎える。自由奔放な男性遍歴を辛辣に描いた脚本とスレシンジャーのシャープでテンポ良いタッチの演出が巧い。クリスティの演技は稀に見る素晴らしさ。共演のダーク・ボガードと、今は亡きローレンス・ハーヴェイもクリスティに劣らぬ演技と存在感。不道徳な内容ながら、クリスティの見事な演技とスレシンジャーの適度なユーモアを含んだ皮肉たっぷりの演出に惚れ込む。
(地上波放送だけのこの時代,NHKだけはノーカット、字幕スーパーで提供していた。作品の選定も映画通が好むようなものが多く、とても有り難かった。)
48年振りに見学したが、やはりジュリー・クリスティの演技がいい。後に「ドクトル・ジバゴ」「華氏451」「遥か群衆を離れて」「華やかな情事」「恋」「シャンプー」「天国から来たチャンピオン」そして、「トロイ」「ハリー・ポッター」「ネバーランド」と観て来ているが、25歳で演じたこのダイアナ・スコットの魅力的な悪女は格別である。殆どの女性からの共感は得られず、また奇特な男性以外からは非難されるであろうヒロインを、美しさと演技力で終始魅せる。まだ20代の半ばでの演技とは思えない充実した表現力の豊かさ。主演映画のファーストシーンで撃たれて死ぬ下手な演技まで、うまい。
そして、ダーク・ボガードもその巧さに見直してしまった。特にラストの復讐にも見える彼女への仕打ちをするジャーナリスト、ロバート・ゴールドの複雑な心境を、ダイアナと別れた後に一人車の中で表現するのだが、このシーンの脚本・演出・演技には唸らされた。60年代の退廃的文化と前衛的な演出が、古風で特異な恋愛劇を面白く見せる。
時代の申し子
ジャーナリストのロバート(ボガード)が
ダイアナ(クリスティ)に惹かれたのは
美貌ばかりでなく、活力があり、新しい時代の息吹を感じ取ったからかな
(スウィンギング・ロンドン)
でも彼女は彼の知性に利用価値を感じなくなると
飛ぶ鳥落とす勢いの広告代理店の最高幹部マイルズ(ハーベイ)に飛びつく
仕事は後押ししてくれるから まさにウィンウィンの関係だが
遊び人である彼は関係を結んでも彼女に深入りしない
ゲイの写真家は優しく楽しいが
愛情の対象としては見てくれない
ここで金魚殺害(葬儀セレモニーはする)や万引きも
誰かに愛情や何かを与えようとしない人間であることを露呈
時代の波には上手く乗っかっているような彼女は
一目惚れされたイタリア貴族と結婚
彼は多忙なため彼女の中身に気付かないから
いいかも… でも彼女は孤独
そして召使には静かにチェックされている
空しさを感じた彼女はロバートの元に舞い戻るが
時代とその申し子に見切りをつけた彼は渡米を決意
流行と活力には相互関係があるけど空虚
軽いノリのダイアナが着こなす60年代ファッションは素敵
(衣装ジュリーハリス)
ロバートがインタビューする市井の人々も面白かった
クリスティを支える男優陣は磐石
まともなインテリを演ずるボガード
端正で 人の反応を見ているようなプレイボーイを演ずるハーベイがちょっと素敵でした
髭を剃りながら「何言ってるの、この子」みたいな処も
流行を生み出す側に君臨する彼は 実際、何をやっていて軽薄になるのでしょうか
出会いも多そうだけど 幸福なものは無いのかもしれません
ロバートが本を書く、と言っていましたが
冒頭のポスターの自伝は先手を打ったダイアナのものかな?
クリスティは美しいが、好きになれない女を好演
でも彼女の着こなしと衣装には惹かれてしまいました
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