「堅実で力強い、感動的な伝記映画だ。」ゾラの生涯 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
堅実で力強い、感動的な伝記映画だ。
前半は、親友の画家、ポール・セザンヌと屋根裏部屋で暮らしつつ、代表作を書いて作家として成功するまで、後半は、ドレフュス事件に関する公開状「われ弾劾す」を投稿して亡命し、帰国後にガス中毒で急死するまでを描く。
本作の公開当時(1937年)は、反ナチスを謳う映画がキャンセルされたり修正された時代。本作も、ドレフュスがユダヤ人であることや、反ユダヤ主義には触れておらず、「ユダヤ人」というセリフは出てこない。
とはいえ、本作は実在の小説家を取り上げ、敬意と堅実さに満ちた、人間ドラマに仕上がっている。主演のゾラを演じたポール・ムニは、大いに賞賛されるべき名演だと言って良いと思う。
歴史的に正確かどうかはさておき、1人の作家の成功と急死に至るまでを、生き生きと力強く描いており、感動的な伝記映画を超えた、良心に訴えかける映画だといえる。
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