劇場公開日 1948年6月

「堅実で力強い、感動的な伝記映画だ。」ゾラの生涯 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0堅実で力強い、感動的な伝記映画だ。

2024年9月26日
PCから投稿

小説家エミール・ゾラが、親友の画家セザンヌとの屋根裏ぐらしから、富と名声を得るまでを描く伝記映画だ。と同時に、ゾラが真相解明に寄与したドレフュス事件を描いた映画でもある。

ただし、ドレフュスがユダヤ人である点や、反ユダヤ主義には触れず、「ユダヤ人」という台詞も無い。本作の公開当時は(1937年)、ナチスが独を掌握した時期。米国でも、反ナチスを謳う映画がキャンセルや修正を受けた。

しかし、本作は極めて手堅く、真面目な伝記映画だ。様々な顔を見せたポール・ムニが、本作に熱気を与えており、ドレフュスを演じたジョセフ・シルドクラウト(アカデミー助演男優賞受賞)も、力強く印象に残る。

社会的な正義を求めて、フランス軍の不正を告発した実在の人物を、敬意を持って誠実に描き切っている。飽きることが無い見事な演出だし、感動的な伝記ドラマの傑作だ。

瀬戸口仁