「悲しいこともある、失敗もある、それが人生さ」その男ゾルバ H・Hさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しいこともある、失敗もある、それが人生さ
民族楽器サントゥーリの異国情緒あふれる調べに、二人の男がダンスをするラストシーンは最高のしめくくりでした。
第二次大戦が終わって数年頃でしょうか、村に黒衣の女が多いのは戦争未亡人でしょう。中にもまだ20歳ちょっと位の美人。村の男たちは皆狙っています。なのに未亡人のなけなしの財産であるヤギを横取りしようとしたり、親切とは程遠い態度。この未亡人は若いのに親も兄弟も見えないのは、よその土地の出身なのではないでしょうか。
村に一軒のホテルの女主人。フランス人。トシに似合わぬケバケバしい身なり。むかしは海軍の元帥と浮名を流したのよ、と自慢話ですが、はたしてほんとうでしょうか?実際は下級軍人だったのでは?それは彼女のホラか、男たちのうそか、いずれにしてもけして幸福ではなかった前半生を、彼女は飾りたてたかった。小さくとも一軒の宿を買うには身をひさぐこともしたかもしれません。故国には帰る所もなく、異国で一人きり。やはり村ではよそ者です。
二人の女の最期があわれです。男たちの怒りをかった未亡人はよってたかって殺される。村の女たちは助けてくれません。身寄りの無い女主人の死に際、まだ息があるのに家財を取ろうと、しわくちゃの婆さんまでベッド下で死ぬのを待っている。死んだとみれば村中で略奪が始まる。貧しい時代、貧しい閉鎖的な村。理不尽?そう言うのは豊かな現代の我々。
二人の男もよそ者。イギリスから来たバジルは本で得た知識しかない未熟な青年。なぜか彼に寄りつく粗野でイーカゲンなおっさんゾルバ。けれどゾルバには愛する息子を亡くしたり、アメリカやロシアを放浪した深い人生経験があるようです。ケンカしたりしながらも友情をかためていく二人。その生きざまが見事に描かれてました。
何しろ、この印象的な題名がすばらしいと思います。
この映画にはカットされたゾルバのロシア編があったようです。見たい!