セントラル・ステーションのレビュー・感想・評価
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忘れない人、戻ってこない人
"旅は道連れ世は情け"な一文無し子連れ狼ロードムービー。
主人公の職業=代書人に象徴される識字率に子を捨てる親、そして人身売買など、(原題が「ブラジルの中央」を意味するであろうように)当時のブラジルの世相・社会問題。万引きで銃殺される人、事故死然り唐突な形で無残に奪われる命。ウォルター・サレス監督はやはりロードムービーの人なんだなと痛感。きれいごとみたいなこと言うけど、人生みな何処かへ向かう途中だなと。
擬似親子的であり、境遇を共にする戦友でもある。代書や電車&バスで立つなど、差異を伴う反復イメージングシステムを用い、衝突にユーモアも交えながら、主人公2人の絆が築かれていくさまが見事。主演2人が魅力的だった。同じ家が立ち並ぶ中で2人がある決断をしてから歩き始めるショットからの、同じ構図で各々が歩くショットなど完璧だなと思った。生きづらい厳しい世の中でも人間らしさ(ヒューマニティ)を、納得感のある形で説く。
ネット社会に、スマホも当たり前の現在では作れない作品。信仰も描かれているけど、神は、欲しいものでなく、必要なものを時として予期せぬ形で与えてくれるのかもしれない。そして最後は、少年のカミングオブエイジ青春成長ものにもなるという。読めない手紙を書くというのも…。地域性・文化性も時代性も出ていて、すてきな映画だった。きっと思いは生き続ける。
と言いつつここで怖い話を。
最後のあの出会いがあったとき、「絶対にこいつ嘘ついているヤバい奴だろ」って思ったら、そんなこと無くてハッピー・サッドなクライマックスへ雪崩込むのだけど、犯罪が多いリオの話になったときに主人公ドーラが「犯罪はどこでも同じ」みたいに言っていたことを含んで考えると(作品前半の人身売買連中との"演じる"という共通点もあるので)、やはり自分の心配もあながち間違いじゃない気がする。つまり字を読めないフリをしている!…と考え出したら怖いオチ。本当に少年は大丈夫だろうか?
P.S. 今年の東京国際映画祭1本目。本作は、同監督の『アイム・スティル・ヒア』を今年観て、「何で日本で観れないのか。日本で観れない名作ありすぎ!」と熱がぶり返していたところの作品だったので、念願叶ってスクリーンで観られてよかった。国立映画アーカイブでの鑑賞は、ノーラン監修の『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映以来。
勝手に関連作品『グロリア』『ペーパー・ムーン』
元靴磨きの素人少年
文盲率
大酒飲みで暴力亭主。そんな夫でも戻ってきて欲しいと願う手紙を、最初は無視するドーラだったが、同室の女性イレーニがなぜだか気になってすぐに出せと頼む。2度目。再び頼まれるても、人生相談は受けつけない。暴力を食らってしまうのがオチだと考えたドーラ。少年ジョズエは鋭い感性を持っていた。ドーラが手紙を破り捨てるのではないかと思ったのだ。
それにしても、文盲率がかなり高くないと代書業なんてできない・・・これがブラジルなのか。殺人事件も日常茶飯事。殺伐とした巨大な駅構内でようやくドーラは親切心を見せたかと思われた。しかし、彼女はジョズエを里親紹介所に売り飛ばしたのだ。かなり悪人のドーラ。鬼のように見えた。しかしイレーニが「あれは里親紹介じゃなくて臓器を売りさばく売人だ」と言って、心が変わる。
金もバスの中に忘れてしまって、ヒッチハイクでジョズエの父親の住所へ向かう2人。ジョズエが万引きしたのを叱咤するドーラだったが、自分ももっと万引きして、ジョズエには「買った」と嘘をつく。嘘吐きだけは治らないドーラだ・・・
最初のヒッチハイクで仲良くなったトラック運転手。万引きをかばってくれたのに、ドーラに迫られて逃げてしまう・・・ちょっと笑った。やがて探り当てた家は引っ越した跡。新住所を頼りに父親の家に辿りつくがそこも出ていった跡。しかし、ジョズエの兄にあたる二人が登場して・・・優しい兄。ブラジルでもリオのような都会ではなく、優しい人々の住む小さな町。父が残した手紙を読むドーラはまた嘘をつくが、今度はいい嘘。「父は戻ってくる」と信じた兄と同様、ジョズエもドーラも父を信じるようになる・・・2人の兄に囲まれて眠るジョズエとこっそりとリオに戻るドーラには温かな血が戻ってきたようだ。悪い奴らには気をつけてくれと願わずにはいられないシーンでした。
中年の女性と少年と言うと、ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』を連想してしまう
もう一捻りあれば良かったのにと思う。中年の女性と少年と言うと、ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』を連想してしまうが、あの話まで、少年の年齢が高くない。だから、少年と女性の関係が、今ひとつわからない。
なんとなく、『バクダッドカフェ』見たくて良いかなぁ。って思った
ブラジルの人情劇
Josue の真っ直ぐな瞳
ブラジルのリオデジャネイロで代書業を営むドーラ( フェルナンダ・モンテネグロ )が、ある事柄をきっかけに少年ジョズエ( ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ )と深く関わる事に…。
時に感情をぶつけ合う年齢差の有る二人が、心情を吐露し尊重し合う関係性へと変わっていく。
ドーラとジョズエが互いを思い涙するシーンが秀逸。
思いのほか良かった。
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕版)
代筆業が成り立つ国ブラジル
御涙頂戴ではない、ところがいい
タイトルなし(ネタバレ)
架空の代筆で生計を立てる中年の女は、ある日離れて暮らす主人に手紙を書いてくれという母子と出会う。「飲んだくれのあんたのことは嫌いだけど息子が会いたがっている。」彼女はそう言う。黙って仕事をする女だったが、実は手紙はすべて彼女の家のタンスに仕舞われていた。翌日も現れた母子は手紙の内容を改めたいという。素直に「会いたい」と書いてくれという母はその直後、バスに轢かれて死んでしまう。
母を失い、ストリートチルドレンになる男の子を気にかけた女は、男の子を連れて帰る。でもそれは善意からなどではなかった。万引きした男をその場で撃ち殺すチンピラの紹介で、人身売買をしている夫婦に少年を差し出し、カラーテレビを持ち帰った女だったが、友人の叱責もあって自分のしたことを後悔することに。
命がけで少年を取り戻し、実父のもとへ逃避行を続けることになった二人は、次第に心を通わせていく。金もなく行くあてもなくなった二人だったが、少年のアイデアで代筆業を再開しやがて実父の息子たち、少年の兄達のもとに辿り着く。愛し合っていた事実。支え合う兄弟の姿に安心した女は、少年をおいて一人旅立つ。
とてもいいロードムービーだった。すぐに騙すし、すぐに嘘をつく。悪の見本のような女だったが、優しい気持ちがないわけじゃない。そういうとっても人間的な中年の女と、まっすぐな少年の瞳。滲むような色合い。バグダッドカフェやスラムドッグ、パリテキサスのような色の鮮烈さがいつまでも記憶に残っている。人間はこんなにもいい加減で弱くて、だからこそ愛すべき存在なのかもしれない。バスの中、号泣してしまう女の涙と、バスを追いかけ続けた少年の必死さ。あの高ぶりこそ人間の心のリアルな姿なのだろう。
性善
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