「強烈な爆弾」戦場にかける橋 えさんの映画レビュー(感想・評価)
強烈な爆弾
米Yahoo!「死ぬ前に見たい映画100」
復刻上映とのことで映画館で鑑賞。
映画の冒頭から、その規模の大きさに圧倒された。大勢の人員が動員され、近年の映画では見られない圧巻の映像が広がる。
最新の作品であればCGが多用されるだろうが、この映画が作られた時代にはそうした技術がなかった分、リアリティとスケール感が生み出されていた。
少なくとも冒頭の一連の描写を見る限りでは当時の映画産業や時代の豊かさが想像できた。
物語冒頭は、日本軍の捕虜となったイギリスの指揮官、ニコルスン大佐と日本の斎藤大佐を中心にその主義とプライドが激しくぶつかり合う。
斎藤は収容所の絶対的な権力者として君臨するが、ニコルスンはそれに屈しない。銃で脅されようと、昼夜立たされようと、独房に閉じ込められようと、毅然とした態度を貫く。
その姿は「軍人の模範」として描かれている。
やがて、斎藤は任務と立場の間で追い詰められ、ついには折れる。こうして英国軍の誇りと統率を取り戻し「戦場にかける橋」の建設は一気に進み始める。
一方、脱走に成功したシアーズも軍の破壊工作に加わり、森へと戻る。
橋を建設する側と破壊しようとする側、それぞれの視点が丁寧に描かれている分、しっかりと両者への感情移入がされており、交互に描かれるたびに物語に緊張感が生まれる。
潜入シーン自体は単調で長いかなとも思えるが、逆にそれが張り詰めた空気を晴らすことなく観客を引き込んでいると思える。
そして迎えるクライマックス。両者が殺し合い、戦場は混乱の極みに達する。橋は爆破され、列車も落下し、多くの犠牲が出る。長年「軍人」として築き上げてきたものは木っ端みじんに崩れ落ちた。足元の強烈な爆弾によって。
名作には間違いない。が、その最後のシーン。主人公が意識を失い、倒れた拍子に起爆装置を押して爆発してしまう展開は、令和の視点で見るとさすがに拍子抜けに感じてしまう。