劇場公開日 1957年12月25日

「【”君は、”クワイ河マーチ”に込められた想いを知っているか!”英国将校の、日本軍の捕虜になっても失わない気位と共に、戦争の愚かしさを見事に描き出した作品である。】」戦場にかける橋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”君は、”クワイ河マーチ”に込められた想いを知っているか!”英国将校の、日本軍の捕虜になっても失わない気位と共に、戦争の愚かしさを見事に描き出した作品である。】

2022年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作のメインテーマである、”クワイ河のマーチ”は不惑以上の年代の方であれば、例えば小学校の運動会の入場行進曲などで、聞いたことがある方が多いのではないかと、推察する。
  明るく、勇壮な曲調であり、日本軍に囚われた英国軍が見事に逆襲する・・、と言う事を想起させる。
  だが、今作を観れば分かるのであるが、決して勧善懲悪の物語ではなく、戦争の愚かしさや虚しさを描いた作品なのである。-

■第2次世界大戦下のビルマ。
 日本軍捕虜収容所に、ニコルソン大佐(アレックス・ギネス)率いるイギリス軍捕虜が送られてくる。
 所長・斎藤大佐は、彼らにアメリカ軍少佐・シアーズ(ウィリアム・ホールデン)と共に泰麵鉄道のバンコウとラングーンを結ぶための橋梁建設の労役を命じる。
 だがニコルソンは将校を働かせるのは、ジュネーブ協定に反すると主張し、斎藤と対立する。

◆感想

・今作で、捕虜収容所を束ねる、斎藤大佐の位置づけは重要である。期日までに橋を完成させないと、切腹せざるを得ない。彼はジュネーブ条約を盾に、将校を労役に就かせないと主張するニコルソン大佐を見せしめの様に”オーブン”と呼ばれる獄に繋ぐ。
だが、ニコルソン大佐はそれに屈しない。
ー 今作が、奥深く描かれているのは、日本の大佐を安易な悪役として描かずに、大佐も又、上部からの指示通りに橋が作れない事に苦悩する姿をキチンと描いている事だと思う。-

・そして、ニコルソン大佐を懐柔しようとする斎藤大佐に対し、橋の建設方法の瑕疵を指摘し、捕虜の殊遇改善も含めて、交渉していくニコルソン大佐の姿。
ー 彼の政策は身を結び、英国捕虜だけではなく、日本軍も橋梁建設に協力して行く様。-

・一方、序盤に収容所を命からがら脱出した、アメリカ海軍のシアーズ中佐(ウイリアム・ホールデン)が、保養所でノンビリしているところにウォーデン少佐(ジャック・ホーキンス)が現れ、シアーズの身分詐称を指摘しつつ、現地に戻る事を指示する。

■橋梁建設に、惜しまない努力を費やすニコルソン大佐。だが、一方ではその橋を爆破しようとするウォーデン少佐らの企み。
 そして、見事に橋梁はニコルソン大佐達の優れた工学知識により完成するも・・。

<今作は、メインテーマソングだけ聞くと、単なる第二次世界大戦時の反日本映画と捉えらえがちであるが、実は違う。
 今作が描いたのは、戦争の愚かしさや、虚しさである。
 そして、それを分かりつつ、懸命に与えられた任務を遂行しようとしたイギリス、アメリカ、日本の軍人たちの姿を見事に喝破した点が素晴しいのである。
 反戦映画の逸品であろう作品である。>

NOBU