「James Bond in the 80s」007/ユア・アイズ・オンリー pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
James Bond in the 80s
ジョン・グレン、やってくれた!
これはいい!
80年代最初の007は見事な原点回帰、原作尊重の作品であった。
しかも、B.Gは初の清楚路線。
知性的で有能なところは前作譲り。
エンディングギリギリまで、ジェームスと情を交わすどころか、キスひとつしなかったボンドガールは初めてだ。
代わりにオトナのお色気パートはコンテス・リスルが引き受けてくれるが、彼女がピアース・ブロスナンの奥様だとは知らなかった。
ブーケはカビーが、コロンボ役のトポル(屋根の上のバイオリン弾きの人ですね♪)はカビーの細君が見初めたらしいが、リスル=カサンドラ・ハリスの陣中見舞いにブロスナンが撮影現場を訪れた時、カビー始め多くのスタッフが彼に未来のボンドを見たという。
ハリスは癌の為43歳の若さで早逝するが、不思議な縁を感じてならない。
冒頭は、名作「女王陛下の007」にて結婚式直後に非業の死を遂げる最愛の妻、トレイシーのお墓参りから始まる。
続けて、ダイナミックなヘリでのアクションシーン。
宿敵ブロフェルド(例の権利問題により、作中でブロフェルドだと明言はしないが)を、容赦なく葬る。
お次はカーチェイス。
何ィ? 2CVだとぉ!
一目見た瞬間、露骨に嫌な顔をするボンドw
そりゃそーだ。2馬力だwww
(504は約100馬力、エスプリターボは約200馬力。2CVは2馬力という名前だが実際は9馬力程度までは叩き出せる(焼け石に水w)ウサギと亀より分が悪い。ハナから勝負になどならないのだ)
はてさて、マドリッドの片田舎にて繰り広げられる派手な追いかけっこ。
迫るプジョー504。道なき道を駆け下る2CV。しなやかな「猫足」がウリのプジョーも2CVと比べてはめちゃくちゃゴツい悪役に見えるw
ちょっと待てよ。思いっきり「リアル・カリオストロの城」じゃないか!
待て待て、カリオストロ公開いつだった?(検索タイム!)1979年?
マジか。完全に真似したね、これ。
まぁ、でも「アニメだから出来る事」を実写化するのは遥かに難易度高いものね。ここは称賛するしかないか。
撮影秘話を調べてみれば、2CVを8台使い、そのほとんどがクズ鉄と化したと。さもありなん・・・。
マドリッド設定だけど、ロケはギリシャだって。そーなんだ。うん、スペインぽさ、出てるよ、出てる!(笑)
田舎道を駆け下っても、どこかしらに必ず農家の人が働いてるとか、街中では横転した車を皆で起こしたり押してくれたりとか。脚本&演出、good♪
スペインの人って、いわゆる大阪弁で言うところの「いっちょかみ」なんだよねw
2台もエスプリ・ターボ投入しておきながら「爆破」されるだけ&「棺桶」になるだけ。完全に2CVの引き立て役でした。
今回、アクション凄すぎ!
冒頭のヘリに始まり、アクロバティックなカーチェイス、見事過ぎるスキー、海洋ボート引き回し、メテオラの奇岩クライミング!(2CVネタに字数使い過ぎたから、端折りますw)
これらのレジャー経験が少しでもあれば、本作のアクションがどれだけとんでもない事ばかりしているかわかるはず。
(想像やバーチャル経験だけではわかるはずもないが)
CGが無い時代「本物」だけがもつリアリズムに興奮させられる事しきりだ。
しかも、ジェームスが女性を口説かないよぉ。固茹で卵(ハードボイルド)だよぉ。
ロジャーが格好良いよぉ。
本当にこれ、ムーア・ボンドか?(笑)
ゴーゴル将軍のヘリがちゃんと「本物」のMi-2なのも良かったなぁ。ホプライトだよね。
デタントを口にするボンドに将軍も大物の笑顔を見せる。時すでにデタントの時期は去り、西側諸国がモスクワオリンピックをボイコット、再び緊張が高まっていた時代だ。
本作の数年前頃、担任の先生が夏休みにソ連旅行したらしくクラスの子供全員に「モスクワオリンピック記念ピンバッジ」を買ってきてくれた。(デタントだから出来た事。当時、民間人が東側に行くなんて、現在の北朝鮮に潜入するくらいの恐怖感を抱いたものだ)
日本でもアニメ・こぐまのミーシャが放映されていた頃だ。まさかボイコットによる幻のオリンピックになるとは。日本においては非常に貴重なピンバッジになってしまった。
オマケネタ。冒頭、ゴンザレスの登場時、一緒に観ていた息子が「こいつの名前がマリオだとしても驚かないぞ」と言ったが、その後、北イタリア・コルティナの現地連絡員がルイージだったのがウケた。
あとは、当時大人気を博したシーナ・イーストン。こんなに美人だったのね〜。OPで再認識。数年後にマドンナがブレイクするまでは、No.1女性シンガーだったと思う。
男性陣では、コロンボも格好良かったなぁ。4作目のスペクターNo2ラルゴや、6作目のトレイシーちゃんのパパ・ドラコなど、こういう男性は好きだ^ ^
みんなバランス感覚とポリシーと行動力のあるワルなんだねw
閑話休題
コネリーの「ロシアより愛をこめて」
レーゼンビー「女性陛下の007」に並ぶ傑作
ムーアの「ユア アイズ オンリー」が誕生した。
80年代、新たな007史の幕開けに相応しい良作であった。
当時リアルタイムで(名画座ですが)観た我が生涯的映画の、1972年の『フォロー・ミー』 Follow Me! の主演、トポルが久々登場して良い役で出ていたのが物凄く嬉しかった思い出の映画でもあったんですよね。
この映画も、音楽はジョン・バリー氏の担当で、これがまた世界で日本のみ発売だった当時のLP時代からの愛聴盤で.....
この映画って、のちの人気TVシリーズ『ダーマ&グレッグ』の元ネタだと思いません?
アリスト・クリスタトス 役のジュリアン・グローバー氏、実は1973年作の『死ぬのは奴らだ』のボンド候補として、最終候補に挙がっていたという説がある。
グローバー氏が敗れて、最終的にロジャー・ムーア=ボンドの誕生に。
で、当作では黒幕役に抜擢(?)の形で、シリーズ参加が実現したらしい。
グローバー氏はその少し前の1971年に、イギリス映画の『最後の手榴弾』
に出演しているが、その映画もグローバー氏以外にも結構007絡みありで、
『ゴールドフィンガー』のプッシー・ガロア=オナー・ブラックマン
『消されたライセンス』の、元オリンピック陸上金メダリストのレイファー・ジョンソン、
その他も中々のもので、
主演は『ナバロンの要塞』、『アラン・ドロンのゾロ』のスタンリー・ベイカー氏
宿敵が、リメイク『駅馬車』、後年TVシリーズ『エアーウルフ』でアークエンジェルのアレックス・コード氏
更に、『大脱走』や『ジュラシック』出演や監督としても高名なリチャード・アッテンボロー氏など
現在は殆ど一般的視聴困難で、知名度最下位レベルの映画でしょうね...
ジュリアン・グローバー氏は『スター・ウォーズ•EP5』にも登場してますね。
ジョン・グレン監督の第一作目で、ここからが現在に至った彼による『女王陛下の007』復権作戦の開始でした。
見事に身を結んで、現在の映画界陣たちの若き時代にシッカリと刷り込まれ、現在では賞賛を受けるまでに再認知されるに至り、作戦成功と。
トポルの組織がボンドに協力、共闘する展開とかが“ユニオン・コルス”彷彿させるという所など、劇場鑑賞時「リスペクトだな〜」でした。(テレサの父ちゃんの)
‘60年の短編「読後焼却すべし」For Your Eyes Only が原作だから、映画は『女王陛下』と順番が逆になってしまった関係。
本来『女王陛下』の次に『2度死ぬ』で、テレサを失って堕ちぶれ使い物にならない状態のボンドを、起死回生をかけてMが日本に送り込み、そこで調査任務の相手が実は仇のブロフェルド& イルマ・ブントと気づいて..、の代わりに続きが『ユア・アイズ・オンリー』からということに。
ボンドの妻殺しという、このシリーズ最強悪女のイルマ・ブント女史役のイルゼ・ステパットさん故人なので以後は未登場。
「映画史に残る憎まれ役(というか実行犯)」だったので、ご存命だったらその後も引きが合ったんじゃないかと思うので、残念な気がしました。
でも、『女王陛下の007』がコケちゃったから、当時はそれ程の注目度でもなかったのかな?
スペクターNo.2=ラルゴ長官は、コネリー弟ニール・コネリー主演で制作された変わり種『ドクター・コネリー/キッドブラザー作戦』にも、Mとかマネー・ペニーやダニエラ・ビアンキなんかと共に出てたりしますね。
ある意味、スゴイ映画です。(内容の事じゃ無く、企画自体が)
※すみません、前のがスマホからで中途半端なところ修正再書き込みしました....
LaLaさん
コメントありがとうございます!
思いの外、車ネタばかりになってしまって恐縮です。(笑)
コネリー&ムーアは、子供の頃にTVの洋画劇場等で見るばかりでしたので、改めて007シリーズを1作目からマラソン鑑賞してみました。
連続して見てみない事には気付かない点が多々ある事、再認識させられましたねぇ。
他の様々なシリーズものも、一から通して再鑑賞しようという気になりましたw
pipiさん
こんばんは
ボンドが、ロジャー・ムーアの時ですね。
とても、懐かしいです。
洋楽も好きなので
シーナ・イーストンさんの
ヒット曲もよく聴いたものでした。
ステキなレビューを
ありがとうございました。(^^)/