「007/スペース・ウォーズ」007/ムーンレイカー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
007/スペース・ウォーズ
シリーズ11作目。1979年の作品。
『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』『スーパーマン』『エイリアン』…当時は空前のSFブーム。
さらに、アメリカではスペースシャトル計画。
宇宙も身近に。
と言う事で、ボンドも宇宙へ!…って、えッ!?
遂に登場! シリーズで最も“進出し過ぎちゃった”珍品。
でも、途中までは至っていつもの007。
イギリスへ輸送中の米スペースシャトル“ムーンレイカー”を何者かが強奪。
お楽しみ中、ボンドはMから調査を命じられる。
プレ・シークエンスは、高空ダイブ・アクション。実写でパラシュート無しというトムクルがやりたそうなダイビング・シーンは、ひょっとして本作一番の迫真シーンかも。
前作で人気を博した鋼鉄の歯の殺し屋ジョーズも再登場。にしても、高空から落ちても死なないジョーズって…。
カリフォルニア、ヴェニス、リオ、アマゾン…と、舞台も目まぐるしく展開。
カリフォルニアにあるシャトルの製造元を訪ねる。
見たら分かるぅ、悪い奴やん!…な今回の黒幕、ドラックス。
ヘンテコ日本人な用心棒。後にボンドは剣道で襲撃する用心棒にフェンシングで応戦。
また、マシーンで強力G体験。
ヴェニスとアマゾンではお馴染みボート・チェイス。
ヴェニスでは浮き輪が膨らみ陸も疾走、アマゾンではパラグライダーで脱出。
その他、Qの発明は今回もユニークな物ばかり。
リオではジョーズと再戦。
カーニバル中やロープウェイで襲撃されるのだけれど、何故か緊迫感がイマイチ。
が、ジョーズにはある出会いが。これが後にジョーズの運命を変える…!
今回のボンドガール、NASAの科学者グッドヘッド博士役のロイス・チャイルズは聡明美人。
彼女は勿論、ドラックスの秘書とも抜かりなくベッドイン。
前作では『アラビアのロレンス』だったが、今作は『未知との遭遇』や『荒野の七人』の音楽が流れるお遊び。
それらはまだいい。
その過剰なサービス精神が、いよいよトンデモな領域へ!
行き当たりばったりのご都合主義な調査で判明したドラックスの恐るべき計画。
アマゾンの秘密基地からシャトルを飛ばし、シャトルに積んだカプセルを地上へ発射し、そのカプセルの中身の猛毒ガスで人類を抹殺。その後、自分や選ばれた者たちで新たな世界を創るというものだった…!
前作もそうだが、この頃の敵の考える計画ってスゲェ…。
計画阻止に挑む訳だが、ここからスパイ映画がSF映画に。
某宇宙要塞ばりの巨大宇宙ステーション!
その内部は、まるで“宇宙の旅”。
ボンドの妨害でステーション内が無重力状態に。皆で仲良くふわふわタイム。
そして極め付けは!
ドラックス宇宙部隊vs米宇宙部隊! 宇宙空間で、レーザー交戦!
見たら分かるぅ、メチャ『SW』やん!
昔見た時あまりの荒唐無稽さに失笑したが(でも何故かこのシーンだけはっきり覚えていた)、今見ても唖然呆然。
しかし、これまでにもシリーズの多くの特殊/視覚効果や『サンダーバード』を手掛けたデレク・メディングスによる精巧なミニチュアの特撮はハイクオリティー。(オスカー視覚効果ノミネート)
宇宙にまで活躍の場を拡げたシリーズ最大スケールの娯楽巨編かもしれないけど…、
さすがにこれはやり過ぎだし、スパイがまるでスーパーヒーローに…。
次作では本来のスパイとしての任務に戻るが、もしかしたら私たちが知らないだけで、今も宇宙でスパイが活動していたり…??
最後に、ジョーズについて。
敵役が人気キャラに。
となると古今東西、敵役から味方に。
前述の通り運命の出会いもあり、初めて喋る! その低くて渋い声!
ジョーズ、お幸せに!
もう一つ。
次作にも出演する筈だったM役のバーナード・リーだが、撮影前に…。
よって、次作では休暇中という扱いとなり、実質本作が遺作に。
Mからの指令と信頼ナシで007の活躍は始まらない。