「ロジャー・ムーア時代の最高峰。」007 私を愛したスパイ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ロジャー・ムーア時代の最高峰。
ボンド役者の中ではロジャー・ムーアが一番のお気に入り。歴代で最もおちゃらけ要素の強いムーアだが、あの軽妙さ、どれだけふざけてもゆるされる愛嬌、そしてだからこそ生まれる哀しさなど、本当に得難いボンドだった。しかしだからといって作品が傑作ぞろいというわけではなく、むしろムーア時代はおふざけが過ぎていて駄作も多い。しかし、ムーアならではのボンドらしさと、作品のクオリティが珍しく両立したのが『私を愛したスパイ』ではないか。
エキゾチックなロケーション、荒唐無稽な秘密基地、ボンドを仇と狙いながらも惹かれてしまう女スパイ。いかにも007シリーズらしい定番ネタの数々が特に目新しいわけでもなく並んでいるのに、ここまで引き締まって見えるのかと驚かされるのは、製作費が倍増したおかげかも知れないが、とにかくシリーズ平均に比べてワンランクもツーランクも上の作品に仕上がっている。ムーア時代は半笑いで語られがちだけれど、まずは本作を試していただいた上でその是非を判断していただきたいところです。
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