「私たちが愛するロジャー・ボンド最高作」007 私を愛したスパイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
私たちが愛するロジャー・ボンド最高作
シリーズ10作目。1977年の作品。
英ソの原潜が行方不明に。両国の緊張が高まり、Mから調査を命じられたボンドは、ソ連側のスパイと共同任務に当たる事に。
東西冷戦を背景にした2つの国の睨み合い。
それに乗じた大陰謀。
敵ボスの印象や構える秘密基地。
まるでスペクターのよう。
実際、当初はスペクター再びの予定だったらしいが、『ダイヤモンドは永遠に』のいざこざ諸事情で叶わず。
なので、“スペクター的”な今回の敵は、海運王ストロンバーグ。
原潜から奪取した核ミサイルで世界を滅ぼし、世界を海の世界に創り変える。
海を愛する気持ちは人数倍だが、それが度を過ぎた異常者。
昨今のシリーズはリアリティーあるテロリストがほとんどだが、かつてはこういうブッ飛んだ敵が多く、リアリティーは無くともそれが魅力であった。
にしても、この頃の敵ボスってサメを飼ってる率高いよね。
共同任務のソ連のスパイ。コードネームは“トリプルX”。
初登場シーンでお楽しみ中電話を取ったのは、女の方。
随一の敏腕スパイで、今回のボンドガール、アニヤ。
演じたバーバラ・バックは歴代ボンドガールの中でもトップクラスの美幌と魅力。
スパイ能力もボンドに引けを取らない。時には出し抜く。
ロジャー・ムーア時代のボンドガールは単なるお色気添え物の時もあるが(本作もセクシー衣装あり)、ボンドと同じスパイなだけあって彼女にもドラマがある。
アルプスでの任務中ボンドがそうとは知らず殺した相手は、アニヤの恋人。
復讐を誓うアニヤ。
「任務が終わったら、あなたを殺すわ」
だけど、初登場シーンでお楽しみしたり、ボンドに惹かれたり、恋人が死んだというのに恋愛面は自由奔放。
登場キャラで忘れてはいけない…いや、忘れられない名物キャラが登場。
殺し屋ジョーズ!
2mを軽く巨体、車を持ち上げ素手で壊す力持ち、崖から車ごと落ちてもサメの居るプールに落ちても死なない不死身。
最大の特徴の鋼鉄の歯! 噛み付くシーンは“ジョーズ”ではなく、ドラキュラのよう。
何故か不思議と愛すべき感じながらも、とにかくそのしつこさで、ロジャー・ボンド時代の代名詞キャラに。
前2作以上の予算で、アクションもスケールもセットも大掛かり。
アルプスの断崖絶壁から大ジャンプのOPアクション。
エジプトのピラミッドやスフィンクスのライトアップ。『アラビアのロレンス』の音楽も使用され、オマージュ。
中盤のお馴染みチェイス・アクション。
『サンダーボール作戦』のような海中アクション。活躍する水陸両用のボンドカー。今作からQの秘密兵器説明が完全定番になったとか。
あのキューブリックにアドバイス貰ったという海上要塞や巨大タンカーの奇抜なセット。(オスカー美術賞ノミネート)
それらで繰り広げられるクライマックスのアクション。
…などなど、見所はいっぱい。
音楽と主題歌はマーヴィン・ハムリッシュで、アカデミー作曲賞・主題歌賞にWノミネート。主題歌は他の映画でも使用されるほど有名。
難点・不満点が無い訳ではない。
任務が終わったら殺す。
今回のこのタイトルからもドラマチックなラストを期待するも…。
アレ、いつもと変わりナシ。
クライマックスの核ミサイル起爆装置を外すシーンはハラハラドキドキだが、そのシーンや核ミサイルの軌道を変えたり、ボンドさん何にでも万能過ぎッ!
やっぱり、ロジャー・ボンドはロジャー・ボンド。
それから、洋画あるある。核ミサイルのいい加減な扱われ方…。
これまでも面白いのは面白いが、正直秀でた作品が無かったロジャー・ボンド。
記念すべき10作目という事もあって、面白さに気合いが入り、現在に換算するとシリーズ最大のヒット。
ロジャー・ムーア自身最もお気に入りと語り、『ユア・アイズ・オンリー』もいいが、ロジャー・ボンド最高作。
…しかし!
次作でまた珍作に逆戻り…。いや、シリーズの中でも珍作中の珍作になろうとは…。
余談。
延期に次ぐ延期を繰り返し、最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』がやっと11月に観られる筈だったが…、
何やらまた延期の話が聞こえてきた。
え~、またぁ~!?
007シリーズは8割がた観てるのですが、延期になったというのなら、もう一度総復習したくなりました。
この作品はクレイグボンド以前におけるボンド最高作だと思ってます。
え!また延期ですか!?一応007のTwitterではまだUK公開が11/12になってます。
もうホント何が延期になってもおかしくない状況は勘弁して欲しいです😣