「ボンド、ロジャー・ボンド」007/死ぬのは奴らだ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボンド、ロジャー・ボンド
シリーズ8作目。1973年の作品。
本作から3代目ボンド、ロジャー・ムーアが登場!
任務件数は7件で、歴代ボンドの中でも最多。
在籍期間は12年で、こちらは6代目ダニエル・クレイグの14年に抜かれてしまったが、あちらは3年~4年置きに対しこちらは約2年置きとハイペース。
そんなロジャー・ボンドも、2代目ジョージ・レーゼンビー同様、就任当初は不評であった。
しかし、徐々に愛されるボンドに。
初代ショーン・コネリーとは違う魅力。どんな危機的状況でもユーモアを忘れない。ボンドの放つジョークはこの人が一番!
本作はまだクールなボンド像で作品もシリアス路線だが、その後は軽快な娯楽作が大半。時々サービス精神あり過ぎて、『ムーンレイカー』なんてトンデモ作もあったが…。(これについてはその時に)
シリーズ物の中期はマンネリや中弛みが多い。が、ロジャー・ムーアの魅力で支え、貢献。
人によってはムーアこそ、“THEジェームズ・ボンド”である。
さて、ロジャー・ボンドの初任務は…
アメリカ各地で英国諜報員が相次いで殺される。調査を命じられたボンドはアメリカへ。犯罪王ミスター・ビッグが世界中にヘロインを蔓延させる陰謀を突き止める。彼に仕えるタロット占いの美女ソリテールをボンドの“魅力”で惹き入れ、野望阻止に挑む。
初代が長い激闘の末スペクターを壊滅させたので(と言うか、実際は前作で原作側とのいざこざ)、本作からは代わる代わる犯罪組織との攻防に。
本作はNYハーレム拠点の犯罪組織なのだが…、
当時流行っていたブラック・ムービーの影響大。つまり、ボンドとボンドガール、ボンドの協力者以外、敵は全て黒人。
また、ブードゥー教も絡み、かなり異様な描かれ方。
今なら批判を浴びそうな…。
でも、傲慢ちきな白人保安官も登場し、まあおあいこか。あくまでヒーローはボンドだけ。
序盤~中盤は特筆すべき大きな見せ場に乏しく、ちと退屈。
が、クライマックスを飾るボート・チェイスは本作最高の見せ場!
河のボート・チェイス、陸からのパトカー追跡、コミカルなシーンも挟み、迫力あるシーンになっている。
それにしても本作でのボンド、ヘビにワニにサメとやたらと危険動物に襲われそうになっている。
ボンドガール、ソリテール役のジェーン・シーモアは実に魅力的な美女。
タロットカードで予知能力を持っている巫女のようだが、ボンドと寝て処女を失った事で予知能力も失う…って、一応彼女の一族に伝わる事らしいが、にしてもどんだけ凄いんだ、ボンドの精力!?
ポール・マッカートニー&ウィングスが歌う主題歌“LIVE AND LET DIE”はシリーズの中でも名曲の一つ。
プロレスの入場シーンやバラエティーの乱闘シーンなんかでもよく使われ、聞けば「あ~!」となる事必至。
全体的には悪くはないが、最高でもない。
シリアス路線に後の娯楽テイストも見え隠れし、手探り状態といった印象。
でも改めて見ると、ロジャー・ボンドもカッコイイ。
彼の本領が発揮されるのはこれから!