劇場公開日 1944年4月13日

「検閲を乗り越えて!」一番美しく kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0検閲を乗り越えて!

2019年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 非常増産機械の割当量が増えた。男子は10割、女子は5割。その割当量が不満なのか女子工員たちは仕事中もぺちゃくちゃおしゃべりを・・・といった風景。しかし、増産が不満なのではなく、男子工員に比して割り当てが少ないことが不満だったのだ。まさしく国策映画としてふさわしいような展開。

 毎晩熱が出てもそれを渡辺(矢口)に隠すように懇願する少女。国策映画としてではなかったらどんなに美しい映画と感じることだろうか・・・しかし、さすがは黒澤監督。そこまで女子工員たちを増産兵器への製造に駆り立てるものは何だろうかと感じさせる手腕は見事なもの。ところどころに敗戦が濃厚となるフラッシュがあったり、完全な国策映画の中に垣間見せる監督の(反戦の)想いが心に残る。特に顕微鏡を覗くシーンでは渡辺が疲れのためにフラッとなる意味と戦闘機の墜落が妙に一致してしまう。

 そうした細かなところはあっても、しっかりと検閲を通って(というより、情報局選定となっていた)いるのだから見事。

kossy