「軍事法廷は「裁判」ではない」スペシャリスト 自覚なき殺戮者 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
軍事法廷は「裁判」ではない
海外(アルゼンチン)で被疑者の身柄を拘束し秘密裏にイスラエルに護送し、国際裁判にかけるのではなくイスラエル国内で裁判にかける。それだけで「公平」な裁判とはいえない。
アルゼンチンにおいて「暗殺」という選択肢もあったであろうなかで、あえて裁判というかたちにしたのは、「市中引き回しの上、打ち首獄門」の効果を狙ってのことか。
アイヒマンに非がないとは決して言わない。彼の犯した罪は重く、「指示を受けただけ」「自分には責任がなかった」との意見で彼個人の罪を逃れることはできない。最終的には極刑もやむなしと思う。
しかし、裁判の運営自体はとてもいただけない内容だ。結論ありきで、彼が直接関与していないことも全て彼の責任として罪を挙げ続ける。裁判官は公平なスタンスをとっておらず、まるで検察官がふたりいるような姿勢。弁護人は沈黙し全く機能せず。
殺人の被告人もきちんと公平な裁判を受ける権利があることをあらためて考えさせられる内容。
また、アイヒマン裁判の状況を知るための貴重な記録映画。
1961年5月31日に死刑制度の無い国イスラエルでの死刑が執行された。
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