「ジャッキー対ユキーデのバトルはものすごい」スパルタンX バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャッキー対ユキーデのバトルはものすごい
ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウのトリオ主演映画で、監督はサモ。『五福星』はサモ監督・主演映画にジャッキーがゲスト出演してユン・ピョウは1シーンだけのカメオ出演、『プロジェクトA』はジャッキー監督・主演映画にサモとユン・ピョウが助演したものだが、この映画は最初からトリオ主演の企画だったと思われ、3人の出番や見せ場が均等に配分されている印象。ただそれも今になってみればの話で、映画館で観た当時はもちろんそんなこと知らなかった。狭い香港での撮影に限界を感じていたサモが海外で撮ることを提案し、オール・スペイン・ロケになったとのこと。『スパルタンX』という邦題は中身と全く関係がなく、たぶん配給の東宝東和が「『プロジェクトA』が当たったから似たような『カタカナ英語+アルファベット』のタイトルにしちゃえ」と適当に決めたんじゃなかろうか。
映画館で観た時の感想としてはクライマックスのジャッキー対ベニー・ユキーデのバトルはものすごかったけど、全体としては『プロジェクトA』ほどの出来ではなかったというものだった。あくまで『プロジェクトA』に比べればの話で、この映画単体で言えばもちろん面白かったんだが。あとヒロイン役のローラ・フォルネルが個人的には今ひとつ好みではなかった。その後、民放テレビの吹替放送で1度観たような記憶があるが、レンタルビデオやDVDでは観ていない。実は少し前になぜかこの頃のジャッキー映画がやたら再観賞したくなり、レンタルDVDで30年以上ぶりに観た。
観直しても、やはり映画館で観た時と感想は変わらなかった。もちろん面白いしジャッキーとユキーデのバトルはすごいが、全体としては『プロジェクトA』には及ばない。今になって観るとサモ監督だけあってちょっと『福星』シリーズ(『五福星』『大福星』『七福星』)味があって、ギャグのテイストや編集の感じがジャッキー監督の映画とはちょっと違う。特に精神病院のシーンはリチャード・ン、ジョン・シャム、ウー・マらの『福星』組が出てくるだけあって、くだらないギャグの連発。というか患者がなぜか中国人ばっかりというのも変で、あそこだけは香港で撮影したんじゃないだろうか。リチャード・ンらがわざわざあのシーンだけのためにスペインまで行くとは思えないし。
なおレンタルしたDVDは現在流通してる広東語吹替版だったが、日本で劇場公開されたのは英語吹替版でVHSやLDもそのバージョンだったらしい(スペインだから英語でも広東語でも変なんだが、最初に映画館で観た時にはそんなこと気にならなかったんだと思う)。さらに音楽も劇場公開版とは違うらしく、エンドロールのNG集も無い。言語や音楽は記憶にないがNG集は確かに当時のジャッキー映画にはもれなくあった。今になってみるとNG集は日本向けの要素が強かったようだ。エンドロールにNG集を付けるアイデアを考えたのは日本の配給担当者だという話もある。Blu-rayには日本公開復刻版が映像特典として収録されてるらしいが、さすがにそれだけのために買って観る気はない。てか英語吹替版て何のために作られたんだ? 当時の香港映画が欧米で公開されたとは思えんが……。