劇場公開日 1987年4月18日

「現実逃避の願望が冒険という形を取って表れている」スタンド・バイ・ミー 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現実逃避の願望が冒険という形を取って表れている

2024年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

かなり好きな映画。ストーリーの秀逸さ、森林や湖といった映像の美しさ、途中で挿入される音楽の軽快さ等、どれを取っても最高。

主人ゴーディら4人の少年は、死体探しを行って有名になることを目的に冒険を始める。しかし、これは建前なのだろう。彼らの家庭環境は良いとは言えず、それぞれが問題を抱えている。ゴーディの親友クリスが、冒険の道中で「自分を知る人がいないところに行きたい」と言っていることから分かるように、冒険の本当の動機は現実逃避にあることが窺える。皆子供なりに辛いことがあり、ストレスを抱えながら生きている。そんな彼らの気持ちに共感できる部分があり、切なくなる。冒険を終えて、自分達の住む町に帰って来たときの彼らの呆然とした表情からも、現実逃避の願望が冒険の根底にあることが分かる。うんざりする現実に帰って来てしまったこと、そして楽しい冒険の時間は2度訪れないことが表現されていてるのが秀逸。

根岸 圭一