「もう会うこともない友達」スタンド・バイ・ミー ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)
もう会うこともない友達
原題も邦題も「スタンド・バイ・ミー」で、「私のそばにいて」という意味です。
上映時間は、89分と短いですが、音楽と共に心に残ります。
12歳の少年が、小学校を卒業し、中学校に入学する直前の夏に、2日間の旅をするロードムービーです。
日本とは違い、アメリカでは、9月が入学時期です。
同じ小学校に通う12歳の少年でも、家庭環境は異なり、抱えている問題も違いますが、抱えている問題を克服し、英雄になりたいという気持ちは同じです。
少年が抱えている問題を友人に話すことで、抱えている問題を克服し、不良と同じことをして、英雄になることはせず、不良にならずに、より良く成長していく様子が描かれています。
抱えている問題を話せる友人は、人生でも貴重で、得難いです。
12歳の少年が持つ純粋な気持ちは、薄れることはありますが、無くなることはないという物語が優れています。
主人公が、新聞で”弁護士クリス・チェンバーズ刺殺される”という記事を読んで、12歳の頃の回想シーンになり、途中で主人公のナレーションが入り、12歳の頃の思い出を小説にするという物語です。
主人公の思い出が所々で挿入されますが、時間が前後することはないので、分かりやすい物語です。
伏線があり、伏線が回収されるので、物語は良くできています。
例えば、主人公が最後の見張りになったというのが伏線で、ラストで回収されます。
名言もあり、心に響きます。
伏線が回収できるか、名言を見つけられるかどうかで、この映画への評価が変わってきます。
物語は、映画「スター・ウォーズ」、映画「ロード・オブ・ザ・リング」や映画「ボヘミアン・ラプソディ」と同じで、「旅立ち」、「成し遂げて」、「帰還する」という構成です。
主人公は、カードゲームでも、駆けっこでも、コイン投げでも負け、不良に兄からもらった幸運の帽子をなすすべもなく取られますが、レイ・ブラワーの遺体を探すために「旅立ち」、レイ・ブラワーの遺体を探すことを「成し遂げて」、無事に家に「帰還する」するという成長物語です。
登場人物は、多く、名前や姓で呼ばれ、説明は少なく、理解しにくいです。
異なる4人の少年が登場するので、いずれかの少年に感情移入することはできるようになっています。
事前に、登場人物と人間関係を把握してから、鑑賞した方が、物語を受け入れやすいです。
大まかに分けると、主人公のグループ、不良グループと町の人々です。
主人公のグループと不良グループには、兄弟関係の人もいて、純粋な少年と不純な大人、遺体を巡ぐるライバル関係です。
1959年頃には、テレビ、新聞、雑誌、本、固定電話と手紙しかありません。
小学校の時は友人で、同じ中学校に通っていても、クラスが違えば、新しい友人が出来て、古い友人とは疎遠になり、別の学校に進学すれば、会うこともありません。
SNSを通して、友人と繋がり続けることなどできない時代の物語です。
12歳の少年がタバコを吸っていたという写真が永遠にSNSに記録される現代も、息苦しくて嫌になります。
少年の頃、悪さをしていたのは、自分だけではないはずです。
悪さでも思い出として、心の中にだけ留めておきたいです。
ときには、武勇伝として話すことも楽しいですが、問題になることはありません。
抱えている問題を話せる友人か、一人で鑑賞するのに向いています。
カップルや夫婦で鑑賞すると、過去の出来事が気になることになりかねません。
有名な映画だからと勧められて鑑賞すると期待外れになると思います。
ロードムービーが好きだという人の期待を裏切ることはありません。
私が好きなロードムービーは、「モーターサイクル・ダイアリーズ」です。
若い人にとっては想像を絶するほど古い物語で、理解できないかもしれません。
若い人には、映画「15時17分、パリ行き」の方が新しくて、ロードムービーとして理解しやすいかもしれません。
ロードムービーがつまらなく感じるのは、平凡な日常生活を描いているからです。
ロードムービーが楽しく感じるのは、成長物語だからです。
自分の人生は、平凡な日常生活を過ごしてきただけだと感じている人は、ロードムービーもつまらなく感じると思います。
自分の人生の中で成長したと感じている人は、ロードムービーに共感し、楽しむことができると思います。
ロードムービーというのは、自分の人生を映す鏡のような映画です。
若い人は、まだ人生が短いので、ロードムービーに共感し、楽しむのは難しいと思います。
若い人は、人生の先が長いので、ロードムービーに憧れることができれば、楽しいと感じることができると思います。
退職し、問題を抱えていますが、問題を打ち明ける友人を作ることは、もう2度とできません。