劇場公開日 1987年4月18日

「ほろ苦い大人の入口」スタンド・バイ・ミー セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ほろ苦い大人の入口

2021年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

中学進学を控えた最後の夏休み、4人の少年達が死体を探す冒険に出る物語です。

特に思い入れのある映画ではありませんでした。少年達がただふざけ合ったり、喧嘩したりしながら、夏休みの思い出を作る話程度にしか思っていませんでした。しかし、今日改めて観て、この作品が名作と言われる理由がわかった気がします。

これから大人になっていこうとする12歳。この時期にしか感じる事の出来ない喜怒哀楽が詰まった映画だと思いました。小学校を卒業し中学へ進み、少しずつ世界が複雑に広がっていく時期。自分の能力とか、家の事情とか、世の中の事とか、様々な事が見え始め、わかってくるこの時期に仲間達と過ごす時間がかけがえのないものである事に改めて気付かされます。

特にクリスの言葉にはそういった感情が滲み出ています。

ミルク代泥棒の真相を語る場面。信頼していた教師の裏切り、そして真実を話したとしても‘家柄’のせいで誰にも信じてもらえないであろう事を涙ながらに語るクリス。リーダー的な存在で、しっかりした強い少年に見えた彼が実はこんなにも傷付いていた事に胸が締め付けられそうでした。

親友のゴーディに‘君は進学コースへ進んで作家になるんだ’と言い聞かせる場面も印象的です。12歳という子供ではあるけれど、家庭環境とか周囲の見る目の違いをきちんと理解しており、自分とゴーディの間に引かれた見えない‘線’を認識している。だけど、親友である事に変わりは無く、ゴーディの才能を認め力強く背中を押す優しさや強さが胸に沁みます。

死体を見つけて有名になりたい!初めはそんな動機だったかもしれないけど、旅を通して心の重荷を打ち明けていくうちに、それはただの死体ではなく、何かの証みたいな物に変わっていったのかもしれない。銃を握って年上の不良達に向かっていくゴーディやクリスの目を見るとそんな事が伝わってきます。

‘付き合う友人はその後変わっていったけど、12歳の時の親友以上の友人に自分は出会っていない’と語るゴーディの言葉もそうだよなと思えますし、ラストで流れるStand by Meの歌も何とも言えない気持ちにさせてくれます。

セロファン