「イニシエーション。」スタンド・バイ・ミー とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
イニシエーション。
町が世界のすべてだった少年も、実は町だけが世界ではないことを知る日が来る。
それでも、それだからこその、その時の記憶。
「お前が死ねばよかったんだ」と父に言われる夢を見る少年。
家族からも、学校でも、社会からも不条理な扱いを受ける少年。
敬愛する父から、一つ間違えば死に至る暴力を受ける少年。敬愛する父への世間の評価も彼を苦しめる。
自分が埋めたへそくりの場所がわからなくなってしまう少年ーちょっととろい彼は、世間や家族からどんな仕打ちを受けているのだろうー。
今の時代なら、自死リスク高位者として、教職員や社会からケアの対象者として認定されてもおかしくはない子ども達。
クリスがゴディに言う。「俺らとつるんでいないで…」自分たちはクラスカースト下位層仲間という認識?
たとえ、おもしろおかしく遊んでいるように見えても、無意識の底では自分の存在の否定≒死が身近な存在。
家族環境・経済的なバックボーン・学力が違いつつも、何かが響きあうから一緒にいる仲間・居場所。
死体を発見しに行く冒険。
もっと違う冒険もあろうに。
死体を見つけることでしか、”有名”になれない町・彼ら。
人口1,000人強の小さな町。
それがすべてだったあの頃。
一泊二日の旅。
他のレビューを拝見すると”小さな”エピソードと書かれているのものも多いが、”小さな”エピソードなのか?
家で遊ぶことが多かった私にとっては、”死”を予感させられるような出来事の連続。
後ろから迫ってくる汽車。
徘徊する狼?
突然深くなる沼。へばりつき血を吸うヒル。
”絶対的”なる存在=死との対峙。
そして、年上の不良集団との対決。
喧嘩しながらも、守り、守られ、可能性を信じあい、自分たちの力だけで乗り越えていく。
往路での彼らの関係性の様子と、復路での彼らの関係性の様子が違うところが、この映画ならでは(横一列、縦一列、二列…)。
みんな仲良し「めでたし、めでたし」ではない。
ゴディ、クリス、テディ、バーンに与えたそれぞれのインパクト。それぞれの想い。それぞれの未来。
心の中の忘れえぬ友。
世間からは馬鹿にされても、ただ一人でも、自分を解って応援してくれる君が(僕の心の)側にいてくれれば、生きていける。
いつか再会し、あの時の思い出を語り合い、心を分かち合えると信じていた友。
君以外には誰にも語りたくない自分だけの宝物。
でも、彼の死によって、
そんな輝くようなきらめきを放つ存在が、確かにいたのだと。
永遠に刻印せずにはいられなくなる。
坊やから少年に変わった日々を描いた映画。
彼らのような経験がなくとも、
彼らのような友達がなくとも、
なぜか、12歳のあの頃の通学路や公園・校庭の風景・風の匂いが思い出され、切なくなる。
クリスとゴディのように、君にだけ語りたいと思わせてくれた、けれど、亡くなってしまった友を思い出して、むせび泣いてしまう。
早世した少年を悼み、
関わりのある少年・少女を想い、ひそかに応援したくなる。
そして、皆が言っているけれど、リヴァー氏。哀悼を捧げます。