「過去は人が勝手に作り出すけど、消えない大切なもの。」スタンド・バイ・ミー ネイモアさんの映画レビュー(感想・評価)
過去は人が勝手に作り出すけど、消えない大切なもの。
本当にストーリーはシンプル!ゴーディ、クリス、バーン、テディの仲良し四人組が一生忘れることのないたった二日間の小さな冒険に出る話。
各々が悩みを持っていて、それに怒ったり、涙したり、若気の至りなのか、意地を張って危険な目に遭ったりする。けど四人は互いに励まし合って進んでいく。
旅を終えて街に戻り、『また学校でな』と別れる。それ以降彼らは一緒に遊んだり、話したりすることはなくなっていく。そうやってまた友達を作り、離れ、作り、離れ…生きていく。
ちなみにクリスを演じたリヴァー・フェニックスは、『JOKER』(2019)にて主人公アーサー・フレックを演じたホアキン・フェニックスの兄だ!!
私も大学の編入受験生時代、ある友達と毎日のように夜遅くまで切磋琢磨していた。難題に頭を抱えたり、辛くて泣きそうになったり、緊張に気が狂いそうになったり、バカやったり、友人や恋人について語ったり、諸問題について議論したりもした。試験本番も直前まで鼓舞し合い、終わってからも励まし合った。何週間か経って、私と彼は別の大学に進路が決まり、私達の受験がおわった。『また学校でな』と別れ、それ以降一緒に勉強したり語ったりすることがほとんどなくなってしまった。あんなに辛い日々を共に生き抜いたのに、私達は離れていく。いつの日か、顔も思い出せなくなるのかもしれないし、二度と会うことがないのかもしれない。懐かしく、悲しい。だが、少なくとも、あの時僕らは互いに励まし合いながら苦難を乗り越えた友達であることに変わりはないし、その事実も消えることはない。過去なんて私達が自分で勝手に想像上に見出すもので、他の生き物や他人には自分の過去なんて認識できないのかもしれない。けど、私にとって彼と過ごしたあの時間は、たった一年と半年ほどだが、この上なく幸せで、楽しくて、これから先一生忘れることのない特別な経験だった。
誰にだってそういうことはある。小さな頃、あんなに苦楽を共にしたのに、いつの日か話さなくなってしまう。別に嫌いになったわけでもないのに、なぜなんだろう?
"イニシエーション" それは"大人"になる儀式。これまでとは違う自分になる儀式。きっと多くの人はこれを経験して、それぞれが大人になって新しい道に進んでいく。その道は無数に分かれていて、人の数だけある。これまで"一緒"に旅を続けてきた私と彼は、これから先は各々が"別"の道を歩んでいく。それがどこかで交わるかもしれないし、もう交わらないのかもしれない。そう思うと寂しいが、私は誰よりも彼を認め、彼を応援している。素晴らしい黄金の一年と半年間をありがとうと言いたい。