劇場公開日 1989年3月25日

「秋山図なのかも」スターライト・ホテル 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0秋山図なのかも

2020年7月11日
PCから投稿

むかしVHSで見た映画だった。舞台はニュージーランド。家出した少女とお尋ね者の逃避行で、内容は記憶が薄れてしまったが、感動したことをよく覚えている。

レンタルビデオの時代は、情報が僅かだったこともあり、何げなく借りた映画が当たると、望外の喜びがあった。

大人と子供の逃避行といえばグロリア、レオン、菊次郎の夏、アジョシなどだが、子供に対する庇護本能がくすぐられることによって傑作が生まれやすい(そんな簡単なことではないだろうけれど)が、ふたりの関係性のポイントとなるのは大人が親ではないことだと思う。
無縁の子供を助けるところにドラマが生まれる。

かつて南半球の映画でよく見る俳優といえばサムニールとブライアンブラウン、三番目くらいにこの映画のPeter Phelpsがいた。
ぶっきらぼうでタフガイタイプだがいっしょに旅するあいだに少女に対する庇護本能が芽生えてくる。

少女(Greer Robson-Kirk)の寂しげな表情は忘れられないのに、憶えているシーンはあまりない。
男は当初、帽子を目深に被った少女を少年だと思っている。それをドボンと湖に投げ込むと長い髪があらわれる。そこはよく憶えている。
ふたりはときに反目しながら、ニュージーランドの広大なサバンナを野宿しながら旅する。
タイトルとなっているStarlight Hotelは「どこかに泊まるんじゃないの?」と泣きごとをいう少女に男が言ったセリフ。「泊まるさ。スターライトホテルに」そう言って男は満天の星々を仰ぐ。そこもよく憶えている。

この映画はVHSの時代、わたしがもっとも感動した映画のひとつだった。出演者も監督も知らず、南半球の話も珍しく、ドレッシーなタイトルはむしろハズれを予感させた。だからこそ増して打つものがあった。

いまさらDVD化はないだろうし、そもそもメディアを購入してまで観ようとも思わないけれど、なんとなく思い出すたび、また観られたらいいなと思う。

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津次郎