「古典の踏襲であり、これまでは無かった映画」スター・ウォーズ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
古典の踏襲であり、これまでは無かった映画
このエピソードIVだけを見れば、
筋はディズニーのおとぎ話や、西部劇・海賊冒険譚そのものーお姫様を、少年や青年が、お供を連れて、老賢者の力を借りて、助けに行く話。弱っちい正義側を助けて、圧倒的な悪を滅ぼすというところも王道中の王道。
なのだけれども、
人型ロボットは、日本人にとって身近だったはず。アトム・鉄人28号・マジンガーZ・キャシャーン…。他にも、あんなのや、こんなのや…。
なのに、C-3POやR2-D2を見た時の衝撃。R2-D2なんて人型ですらない(手塚治虫氏の漫画『火の鳥』のロビタに似ているけれど)。
それなのに、物語の重要な狂言回しであり、コント=お笑い担当でもあるなんて。誰よりも、取り換えの利かないSWを代表するキャラクターとして大活躍するなんて。
通訳ロボットC-3POとの掛け合い。言葉を話さないR2-D2とのやり取り。自分を売り込むことにたけているC-3POと、無言で実直なR2-D2。この映画のキャラの中で一番人間臭い。この2体だけで、一本の映画が撮れそうだ。脚本の勝利。
キングコングもどきが、バディなの?
お姫様があんなにお転婆で口が悪いなんて。あんな所に自ら飛び込んじゃうなんて。そんな扱いでいいのか?!『アリーテ姫の冒険』が発表される前。『ローマの休日』のお姫様とは大違い。金髪じゃなくてブルネットのお姫様というのも”初”だと、何かで読んだ。
かつ、助けられたお姫様と助けた主人公は結ばれて、めでたし、めでたしじゃない!!!
そして、
ダース・ベイダーの圧倒的迫力のラスボス感!!!(黄金バットに似ていると思うのは私だけか)
なのに、さらにその上を行く設定の”皇帝”もいるらしい。との、チラ見せで、巨大な”帝国軍”のイメージを強化する。
えっ?!ラスボス出てこないの?
さらに、
柔道着や、チャンバラをイメージさせる意匠。
中国の”道(タオ)?”のような概念。
え?東洋思想がベース?
今でこそ、かっての日本のバブル期、最近の中国の台頭でメジャーになった感がある東洋思想。80年代には、環境問題に後押しされて、東洋的なものを取り入れることがトレンディーだとされて、いつの間にか忍者とかもUSAに広がっているけれど…。まだまだ”東洋の山猿”とか、結構馬鹿にされていたころ。
USAに、日本が認められたようで、鼻が高かった。
チャンバラが、いかにも私たちの日常のチャンバラと同じレベルで、真似しやすくってうれしかった。
なんて、いくつもの”初”に興奮した。
そして、
初めて見るSFXの世界。
否、日本にだって特撮はあった。『ウルトラQ』、『悪魔くん』etc…。
でも、違う。
あの街を行きかう宇宙人たちの動き。馬のように乗りこなしている家畜たちの動き。あんなに、あんなに、あんなにたくさん…。
後半のファイト場面のグラフィックのセンス。スピード感。ゲームで、自分が操縦かんを握っている感覚になってくる。懐かしのインベーダーゲームっぽいところもツボ。
それでいて、ダースベイダーがぐるぐると回ってどこかに吹き飛ばされる抜け感(『タイムボカン』かあ?)。
どこかで観たことがある風景に近くてノスタルジックな気持ちを刺激されつつ、でも月が二つあるまだ見ぬ風景。
CGを多用した今の映像よりも、宇宙の広がりを感じさせるのはなぜだ。
安定した痛快な物語の中にある意外性。
展開が早く、勢いがある。
反面、ご都合主義とか、後から作られた映画との整合性とか、ツッコミどころも満載。
一つ一つのエピソードは身近にあるもの(ex.借金取り、ごみシューターへの逃避、チャンバラ…)。
おいしいツボがたくさん隠れている(元ネタがあるものもあるし)。
マニアックな監督が、マニアックな観客に送った暗号を紐解くような感覚。
こりゃ、はまるわ。
やっぱり金字塔です。