「音楽性溢れる傑作」シンプルメン たけはちさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽性溢れる傑作
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過去に劇場で観た作品。久しぶりに観ると改めて若々しい映像美と演出力にはっとさせられる。
当時はカイエ・デュ・シネマで特集が組まれる程の衝撃だったハル・ハートリーの代表作の一つ。その登場のインパクトは、フランス映画の恐るべき子供と言われたカラックスとも比すべきものだった。
本作は音楽性が高く、有名なソニック・ユースに乗せて踊るシーンもだが、全編を彩るヨ・ラ・テンゴの楽曲の使われ方が素晴らしい。
ある意味高橋洋氏の言ういい意味での「自主映画」性に満ち、ゴダールやイーストウッド的な光景に独特のオフビート感溢れる演劇的シークエンスの連続が、様々な映画的意匠に埋没することないハル・ハートリー独特の世界観を導いている。
とりわけアメリカ・ニューカラーを思わせる写真的ショットの美しさと、ふとしたパンや移動ショットと共に俳優が移動する鋭いキャメラの映像と動きは、初期ハートリーの才気溢れる演出力の証左となっている。
随所に見られる明らかなゴダールへの目配せも、そう簡単に真似の出来ないであろう車の撮り方等に顕著で。単なるシネフィルではない才能を感じさせる。その意味で邦画における青山真治の名前も思い出した。
登場する俳優は誰しもが魅力的だが、とりわけ女性陣の奮闘と、監督の渋谷系的?趣味性にはにやりとさせられる。
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