「戦争は人の悪い面を浮き彫りにする」シンドラーのリスト movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争は人の悪い面を浮き彫りにする
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同じ人間をなんの躊躇もなく殺せる側も、確かに罪深い戦犯だが、命令に倣うしかなく、躊躇したら気が狂う状況を前に、気が触れてしまった戦争の被害者。戦争は人間の悪い面を浮き彫りにするというシンドラーの言葉通り、善悪の理性をなくさないと自分の命が危なくなる戦争のおぞましさ、危機を前に残虐に変わってしまえる人類のおそろしさをこれでもかと感じさせられる。トラウマになるほどの大量虐殺シーンが続く。実際はカラーで臭気も漂うその場に居合わせたら、防御本能が働き、正しい正義も理性も感情も持てなくなってしまう人間が出るのもわかる。あんな小さな赤いコートの少女も、カラーだったら埋もれてしまっていただろう。モノクロだから大勢の中の1に目がいくが、実際はひとりひとりの人格や人生になど目がいかず、大勢が1になってしまうから、戦争が起こるのだと感じた。自分と同じように、相手にも大切な人生や未来や家族がいる事を考えてはいけない空気。
最初は損得のために動いていた女好きのシンドラーも、ユダヤ人迫害を目の当たりにする生活を通して、自分の持ちうる力を最大限用いてユダヤ人救済に力を尽くす。
どうにもならない状況で迫害をやめようと声高に叫ぶのではなく、ドイツ人かつナチス党員としての自分の立場を利用して上手く立ち回り、社交性や頭の回転の速さや立場や権力や財産など全ての力を、救える人命を増やす事に貢献させていて賢さを感じた。
シンドラー自身も危険なのに、彼は自分の力を奮い立たせる事ができて、「力と正義は別。力は人を殺す正当な理由がある時に殺さない事だ。」と言っていたのが印象的だった。
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