「核燃料工場の疑惑事件」シルクウッド odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
核燃料工場の疑惑事件
六価クロム公害と闘った「エリン・ブロコビッチ」の放射能版かと期待したが、不正暴露の道半ばで怪死したカレン・シルクウッドの生前の私生活を赤裸々に描いたある種レクイエムのような地味なヒューマンドラマだった。実話の様であるが謎は謎のままなので真相は分からない、もっとも製作に際してシルクウッドが働いていたKerr-McGee社から映画が事実に反していたら法的措置を辞さないと脅迫されていたと言うから断定的な脚色は避けざるを得なかったのだろう、内部被爆していたことは事実でカレンの父が民事訴訟を起こし事実上勝っている(130万弗での和解)。
彼女が証拠を渡そうとした記者はNYタイムズのデビッドバーナムで事故現場に駆け付けた時は友人が持っていたと証言するバインダーに挟んだ書類は無く血塗られたノートが車の外に捨てられていたと語っている、彼女の愛車、白いシビックの後部には明らかに追突された跡が残っていたのだが飲酒運転での事故死として処理されている。彼の一連の記事でカレン・シルクウッド事件は皆に知られることになった訳だ。単なる核燃料工場の劣悪な労働問題であれば連合組合も新聞も取り上げなかっただろう、問題は核燃料棒の被服溶接の検査データ偽装であり、もしパイプに亀裂があれば原発事故になりかねない重大問題であり事実が発覚すれば一企業の処分で済む話ではない、映画では労働者仲間の失業を巡る内輪もめを匂わせているが、もっと大きな利権を持つ輩、あるいは政府機関が陰で動いていたかもしれない・・。
マイク・ニコルズ監督の凄いところは市井の人を自然に描くことだろう、ドキュメントとは違ったリアリティが事件の裏側を想起させるのだからたいしたものです。とはいっても事件に関心のない人から見れば暗くて退屈な労働者ドラマと一蹴するかもしれませんね・・。
劇中のアメイジング・グレイス歌唱は脚色でしょうが片乳露出技は何だったのでしょう、メリル・ストリープ(35)さん熱演でした。