「スピルバーグを一気にブランドに押し上げた傑作」ジョーズ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグを一気にブランドに押し上げた傑作
公開時は中学生だった。
オープニングの女性が全裸で泳ぐシーンが、同級生の間では一番の話題だった(恥っ)
この頃はまだ、テレビの洋楽番組で観た「激突」と同じ監督だとは知らなかった。
スピルバーグがテレビディレクター時代の作品「激突」は、アボリアッツでグランプリを獲得し、業界では評価を得ていたものの、映画監督として一般に名前が知られる存在ではなかったが、「JAWS/ジョーズ」以降“スピルバーグ”はメジャーブランドとなった。
午前十時の映画祭で観賞。
非の打ち所が見当たらない。
室内から、サメ退治に出発する船を窓枠に掛けられたサメのアゴの骨越しに捉えたカットや、
船の縁をつたって慌てて船室に入ろうとしたブロディ署長の顔先に、クイント船長が持ち出したモリの鋒がヌッと突き出てきて、ブロディがギョッとするカットなどは、スピルバーグ得意の娯楽的な構図。
サメにどうやってクスリを注入するかを「モリで口の中に直接打ち込む」「そんなこと出来るわけがない」と議論した直後に、三人で檻を組み立てているシーンに切り替わるテンポの良さなどは絶妙。
本作ではまだスピルバーグは雇われ監督だったが、脚色に名を連ねてはいないものの、脚本家たちと日夜ディスカッションを繰り返しながら物語を作り上げたそうだ。
恐らく、スピルバーグのアイディアがたっぷり盛り込まれているだろう。
冒頭で羽目を外し過ぎた若者が最初の犠牲者になるのは、いかにもホラー映画的。
目先の利益を優先して惨事を招いてしまう市長は、パニック映画に欠かせないステレオタイプの存在だが、安直に彼を犠牲者にはしない。
男同士の意地の張り合いは、西部劇にも通じるテイストで、活劇のハラハラドキドキの中に笑いを誘ってくれる。
とにかく、映画を面白くするためによく考え抜かれている。
そして何より、本作でジョン・ウィリアムズと組んだことが、スピルバーグにとって最大の利益だったと思う。
ジョン・ウィリアムズは、既に映画・テレビの劇伴の世界では売れっ子作曲家だったが、本作が彼の一般での知名度を急上昇させた。
スピルバーグは、映像と音楽を一体化させる演出の効果を実感したのではなかろうか。
この後、シリーズはもとより、亜流類似のいわゆる動物パニック映画が続々と作られることとなり、エポックを画した。
中には良作もあるが、本作は未だに色褪せずそれらの代表格に位置していると思う。
kazzさん、コメントありがとうございます。
全く持ってその通りだと私も思います!
レビューを拝読させていただきましたが、本作の魅力を的確かつ端的に表現していらして、もう一度観たくなりました。
kazz様、はじめまして河田です。コメント有難うございます!ジョーズの公開当時 中学生だったという事は、僕より先輩ですね。流石にレビューのデティールが素晴らしいと思いました。