劇場公開日 1975年12月6日

「何十年経っても色褪せないデジャヴに満ちたパニック映画の金字塔」ジョーズ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何十年経っても色褪せないデジャヴに満ちたパニック映画の金字塔

2019年4月22日
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鑑賞方法:映画館

午前十時の映画祭にて鑑賞。海水浴客を待つ初夏のアミティ島の海岸に打ち上げられた遺体。ニューヨークから越してきた警察署長のブロディはサメに襲われたと直感、海岸を閉鎖しようとするが、町の検死官は船のスクリューに巻き込まれたと判定。市長他は強引に海開きを強行するが・・・からのあらすじは書くだけ野暮。ほぼ半世紀前の作品ですがどこを切り取っても斬新。初公開以降無数の作品に影響を与え引用されまくっているのにちっとも色褪せない突き抜けたカットだけで構成されていると言っても過言ではないです。筋立てもやはり斬新。初公開当時はグランドホテル方式のパニック映画が全盛、すなわち様々な登場人物が織りなすドラマの数珠繋ぎが主流だったわけですが、これにはそれが爽快なくらいに端折られていてせいぜい海洋学者フーパーがなぜサメに魅せられたのかを語る程度。ブロディ署長がなぜニューヨークを離れたのか、彼がなぜ海を恐れるのか、クイントがなぜサメ退治に執着しているのか、いくらでも膨らませられそうなネタは放ったらかし。アミティ島の喧騒が占める前半とブロディ、フーバー、クイント対ホオジロザメだけの後半というソリッドな設定にくだらないギャグや辛辣な風刺をバンバンブチ込んでクライマックスに向けて加速していく演出は圧巻、というかまだ27歳なのに作家性が完成していることに驚きます。反目し合っていたクイントとフーバーがサメに襲われた時の古傷を見せ合ってるうちに仲良くなるカットは『リーサルウェポン3』に引用されているなとか山ほどデジャヴもあって何とも芳醇な2時間でした。

よね