「色褪せることのない、映画史に残る最高傑作」ショーシャンクの空に リリさんの映画レビュー(感想・評価)
色褪せることのない、映画史に残る最高傑作
派手なアクションやCGがあるわけでもありません。
しかし、これほどまでに人間の心を揺さぶり、見終わった後に深い感動と静かな力を与えてくれる作品は他に存在しないです。
劣悪な刑務所という閉鎖された空間で、20年近い歳月をかけて描かれるのは、理不尽な暴力や絶望的な状況に屈しないアンディの静かな抵抗の物語。
その根底にあるのは常に「希望」という名の、誰にも奪うことのでこない人間の尊厳です。
この重厚な物語の核となっているのが、アンディとレッドの間に育まれる友情をはじめとした、囚人たちの間の人間関係です。
境遇も性格も違う二人が、長い年月をかけて少しずつ心を通わせていく過程が非常に丁寧に描かれており、過酷な環境の中での人との繋がりがいかに救いになるかを教えてくれます。
特に印象的なのが、屋根の修理作業の後に仲間たちとビールを飲むシーン。ほんのひととき、囚人であることを忘れ「自由」を感じるあの場面は、アンディがもたらした希望の象徴です。その一方で、長年の服役の末に仮釈放されたブルックスが、変わり果てた外の世界に馴染めず自ら命を絶ってしまうシーンは、自由を手にしたはずのブルックスが、外の世界では生きていけないという残酷な現実を突きつけている。この光と影の対比が、物語に圧倒的な深みを与えています。
全てのシーン、全てのセリフに意味があり、それがラストに向けて完璧に収束していく脚本は見事としか言いようがない。
特に伏線の張り方と回収は芸術の域に達しており、初見の衝撃はもちろん、何度見返しても新たな発見と感動があります。
絶望の中にいながらも決して生きることを諦めなかった男の物語は、単なる脱獄映画というジャンルを遥かに超え、見る者に、絶望に身を委ねるのか、それとも自分自身を貫き通すのかを静かに問いかけてくる。
文句のつけようがない、生涯の一本です。
