「単独初監督の時点で反骨のビジュアリスト=ギリアム節が全開!」ジャバーウォッキー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
単独初監督の時点で反骨のビジュアリスト=ギリアム節が全開!
デビュー作にはその監督のすべてがある、と言うが(実際には常にそうでもないとは思う)、テリー・ギリアムの場合はほぼほぼ当たっている。中世への憧憬と映像への偏執的なこだわり、既製のものを打ち壊そうとするアグレッシブさと権力を笑いのめそうとする反骨精神。そして手作りのあたたかみを重視するクラフトマンシップ。厳密にはギリアムの初監督作は『モンティ・パイソン ホーリー・グレイル』(テリー・ジョーンズと共同)であり、『ホーリー・グレイル』の映像の美しさも素晴らしいのだが、作品全体から作家の個性が溢れ出すという点で、『ジャバーウォッキー』はたしかに映画作家ギリアムの第一歩だろう。
一方でモンティ・パイソンを引きずっているようにも思うのは、観客の共感など一切気にしない全編を覆う皮肉な笑い。夢を許さない現実と葛藤する個人を描くのがギリアムの作家性だと思っているが、この時点では「めでたしめでたし」で終わるおとぎ話の雛形はそのままに、ブラックな悲喜劇に仕立てている。逆に言えば、ストーリー的なエモーションを排除していることで、最もピュアにビジュアリストとしてのギリアムの才能を味わえる作品といえるかも知れない。
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