「戦前版「シマロン」と比較鑑賞して…」シマロン(1960) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
戦前版「シマロン」と比較鑑賞して…
「ウィンチェスター銃’73」に続いての
アンソニー・マン作品観賞でもあったが、
実は、一昨年、1931年版の「シマロン」
(アカデミー作品賞受賞作)を鑑賞した折、
①保守的な家庭環境の中で何故
主人公がリベラルな思想を持ち得たか
②主人公は晩年に再び家庭を離れたものの
何故晩年にその近くの油田で
仕事をしていたのか、
等の疑問を解く意味もあって、
このアンソニー版「シマロン」を鑑賞した。
しかし、話の骨子は同じでも
細部については全く別物で、
1931版「シマロン」の疑問を解く鑑賞には
ならなかった。
①については、オクラホマに出立前の
家庭内討議のシーンは無く、
家族の思想信条は描かれなかった。
②については、主人公が亡くなるのは
油田事故では無く、第一次大戦の戦場でだ。
しかし、主人公の信条については、
こちらの作品の方が良く描かれていた。
彼は何事にも好奇心旺盛で、
また正義感溢れる極端な理想主義者で、
理想から少しでも距離があると
我慢が出来なくなり、
そんな己に常に苛立っている人物像
であるのが理解出来た。
ただ、この作品は妻の成長物語の面もある。
そう言った意味では、
夫が知事職を蹴ると言った時に
彼女のレベルが
共感出来る段階に来ているとか、
息子が幼なじみの先住民の娘と結婚して
旅立つ時に「おめでとう」との台詞が
出る位の設定だったら、
より感動も深まったかな、
との思いが生じた中で鑑賞を終えた。
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