シックス・ストリング・サムライのレビュー・感想・評価
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なんだこれは!もうひとつの『マッドマックス』「ほうれん草モンスターに気を付けな」
この映画、私の琴線に触れなければ「なんなん、これ?」の十語にも満たない一行レビューで済むはずでした。ところが周波数が合っちゃったんですよね。
ここ最近、売れ線のメジャームービーを観て、そのレビューしか書いていなかったので。
私だけが大好きな、超カルトムービーを観直してレビュー書きたくなって。『地獄甲子園』の時みたいに。先天的に天邪鬼なんですよ、私。
案の定、レビューの先客はお一人だけ。しかも☆0.5。あんまりなので大幅加点の加勢に来ました。
この映画を一番わかりやすく表現するなら、私が駄文を連ねるよりもDVDのジャケットのコピーを書き起こした方が絶対によさそうです。
こうあります。
「エルビスのメロディが鳴り響く」
「マッドマックス的世界で」
「ジェット・リーばりの技と」
「子連れ狼ばりの殺陣で暴れまくる」
「ギターを持った渡り鳥がいた!」
うん、これに尽きるです。本当にそのまんまのイメージ。言い得て妙の極みのコピーです。
実はジェット・リーのことをよく知らなくて、YouTubeの動画を観てみたです。なるほど!と思って。迫力があると言うよりも、スタイリッシュと表現した方がドンピシャの、キレッキレのカンフーアクションですね。
手元にある、ペラッペラのパンフレット?プレスシート?のコピーには、こうもあります。原文ママ。
「あんまりだ、とソ連の人々は言い(もうないけど…)」
「これは俺じゃないとバディー・ホリーは言い(もう死んでるけど…)」
「全米が泣いた(別の意味で…)」
「ロックンロール・カンフー・チャンバラ・ウエスタン勝手に上陸」
「広東風ロックンロール・マッドマックス」「ロックンロールお伽噺」
とあるんですね。
うん、まんま。このまんま。
パンフレットで情報を調べてみると、本作は監督のランス・マンギアの大学の卒業制作らしいんですね。商業映画第一作目の監督作品。
資金調達してくれたのは、共同制作/脚本/主演のジェフリー・ファルコン。加えて監督自身が借金、出資したのが当時レートで2万5千ドル。追加予算は実に3百万円にも満たないわけ。Σ(oдΟ;)!!エツ!
総製作費は日本円にして2億円ほどだったらしいです。それでも元本とれたのかな?
商業作品とは言え、どうにも自主製作映画の延長線上にある気配だから、言わずもがな厨二病全開のヲタク感満載だったの。いくらストーリーが破綻しようとも「そんなん知るか!」スタイルを貫き通してるの。
「どうせ撮るんやったら俺の好きなモン全部詰め込んだるねん!」みたいな気概を感じたの。
ヤフオクで探しまくってDVDとパンフレット買ってるくらいだから、大好き作品には違いないんですよね。
この作品を知ったきっかけは、当時のTVのモーニングショー番組の紹介。妙に心に引っかかって。
これで終わらせちゃレビューにならないので、やはり私なりの感想の駄文を付け加えるです。
本当にカオスすぎて、わけわかんない映画なの。
お話の背景と大筋から記していきますね。
核戦争後の世界が舞台。1957年“ソ連”が米国を占領しておりまして。
自由の砦はロストベガスという都市のみになっていて。そこに君臨するのは“エルビス”というキング。
その40年後にエルビスは死去。ベガスは新しいキングを求めており。
そんな世界で次なるキングなるべく、ベガスへ向かうロックンローラーたちの戦いのお話。
やっぱりわけわかんないでしょ。
私はオールディーズロックを全く知らないのですが、エレキギターの軽快なメロディが『マッドマックス』的荒野に鳴り響くのが、大変クールに感じました。
全編がそんなオールディーズロックのMTVっぽい作りの映画です。さすがMTV全盛期の1990年代後期って感じです。
核の放射能汚染による影響なのか、知的障害を患った人たちや、異形の人たちを登場させるのは、かなり悪趣味に感じたの。ここが-☆1の減点要素。そんなあたりの世界観が『マッドマックス~怒りのデス・ロード~』に近いです。
もう一人の主人公の少年・デビッド(ラストのカットでこちらこそが真の主人公と気付かされるのですが)からして、言語障害っぽいの。一言たりともまともな言葉を発することがないんですね。台詞と言えば「あぉ~ん」くらいなんですよ。ラストの決戦までは。ラストでやっと言葉を話すです。
なんでか事の成り行きでそんな少年を救った主人公・バディ。
このバディが、スタイリッシュでかちょいいんですね。実在のシンガーソングライター、バディー・ホリーがモチーフらしいです。全く知らない人だけれど。
マッドマックス的世界なのに、着てるのは革ジャンなんかじゃなくて。ボロボロのタキシードにボロボロすぎる雨傘を差してるんですよ。破れ傘刀舟かよ(笑)
背負う古びたエレキギターには、ガムテープムで(笑)日本刀が仕込まれていて。座頭市?
なんでか少年・デビッドに懐かれて、彼と共にベガスへ向かう旅を続けます。
行く手を阻む、異形の一団(本当に悪趣味…)の数々と出会ったり、戦ったりしながら。
そんな感じで、エレキギターのメロディーが流れる『マッドマックス』的荒野でのアクションシーンがこの作品の最大の見どころなの。ってか、それしかないの。ランス・マンギア監督、それを撮りたかったんですよね。
でも、ジェフリー・ファルコンのカンフー&チャンバラアクションが、本当にスタイリッシュでかっちょいいの。
そして、ラストでほろりと泣かせにくるんですよ。
数々の一団を倒してベガスの目の前まで辿り着いたバディとデビッドなんですが、ここで最強のラスボス・デス一味との決闘があるわけ。
バディの弱点を「ヤツは非情になれない」と見抜くデスに追い詰められるバディ。
その言葉通りにデビッドを庇って、矢に射られまくる手負いのバディ。そして奮闘空しくデスの凶刃に、無念に倒れちゃうの。主人公なのに(泣)
いくら斬られても『300〈スリーハンドレッド〉』みたいに血飛沫が出ないのは90年代の映画だからご愛敬。
そんなデスを倒したのがデビッドだったの。なんでか、水筒の水をかけただけなのに。デスは煙になって消えてしまって。
父の仇を子が討つ。この展開、まんま『子連れ狼』なんですね。
倒れたバディの亡骸はそこにはなく、残った彼のタキシードとオンボロメガネを着用したデビッドが、ギターを背負いベガスへ向かうカットで物語は幕引き。デビッドの背にバディの背がオーバーラップして。
考えるに、このカットって、もともとバディなんていなくて。すべてはデビッド少年の成長奇譚の幻だったと思ったの。
秀逸な音楽と相まって、思いっきり涙腺が緩むラストなんですね。
やっぱり好きだわ、この作品。
大好き過ぎて、コスプレ遊びまでやらかしてたんですね。ところが、こんなマイナーネタをわかってくれる奇特な人なんて東京ビッグサイトにはいなくて。かなり寂しいアウエー感に打ちひしがれた思い出があります(笑)
言うたらアレですけど、こんな映画にここまで長文レビュー書けるって、ある意味、才能?
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