「自由と民主主義の国とは何か いまなすべきことは何か? 日本人とて無関係ではありません 今現在の私達の問題なのです」7月4日に生まれて あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
自由と民主主義の国とは何か いまなすべきことは何か? 日本人とて無関係ではありません 今現在の私達の問題なのです
感動しました
オリバー・ストーン監督はアメリカを心から愛しています
そして信頼をしています
ラストシーンは正にそれを具現化したシーンです
心が震えました
表面的な底の浅い単なる反戦映画などでは断じてありません
戦争に良い戦争も、悪い戦争もないのです
すべて糞ったれです
絶対にしてはならないことです
戦争とはより野蛮さを発揮した方が勝つものです
野蛮さを争うなんてナンセンス!
私達は文明国の文明人だったはずです
しかしだからこそ野蛮さに弱いのです
野蛮な相手は戦争で失われる人命など顧みもしないのですから
しかし戦争に負けるとは相手の野蛮さに打ち負かされ、野蛮な暴力に自分の身体も精神も屈伏させられることです
それだけでなく、妻も子供も、肉親も、子孫までも同じ目に合わせてしまうことなのです
アメリカには、本作のように戦争反対を大声で上げる自由があるのです
確かに劇中で触れられたケントオハイオ州立大事件のように権力側に理不尽に弾圧もされ殺される学生もでます
それでもアメリカは軌道を修正していく自由があるのです
このような原作を出版し、その映画を撮影できる自由があるのです
国家の過ちを糺して自省し修正できる民主的な文明国なのです
本作のラストシーンはそれを高らかに歌い上げているのです
だから故郷に帰った、やっと帰ったという台詞があるのです
だからステージの天井には巨大な星条旗のストライプが見えるのです
つまりオリバー・ストーン監督のメッセージはこうです
アメリカを信じている
過ちはしても必ず正しい道に戻る
批判に対して自省し軌道修正する度量を持つ国であると
自分はアメリカを愛しているからこそ批判するのだと
そしてそれだけではなく、さらにもうひとつのことを訴えています
それは劇中のケネディ大統領の就任演説のテレビ中継のシーンを挿入して、その有名な一節をもって代弁させています
我々はいかなる代価をも払い
重荷を背負い
すべての友を助け
すべての敵と闘い
自由の存続と繁栄を守ります
国からの奉仕を期待するのではなく
あなたが祖国に尽くすのです
これこそが本作の真のテーマです
戦争反対!戦争は糞だ!
そう言える自由がある国
自由な社会、民主主義の国
それを守る為になら、それでもなおいかなる代価をも払い、重荷を背負い、国に尽くす
それだけの価値があるのだと
民主主義 対 専制主義
つい先日アメリカ新大統領の口からこの言葉がでました
このような構図が私の生きる21世紀の今現在に進行中なのです
戦争反対や政府への批判をすれば、たちどころに投獄され命すら危ない国との闘い
21世紀のテクノロジーを使い個人の行動や思想信条、言論をすべて追跡して一切の批判も抗議も出来ない社会との闘い
香港は飲み込まれてしまいました
野蛮さとの闘い
戦争がもし起きてしまえば、ベトナム戦争以上の野蛮な戦場が超大規模に起きるのは明らかです
それに恐れをなして軍門に降り
自由を捨て専制主義を受け入れるのか
それとも民主主義の自由を守る為に、敢えて野蛮さの中に身を投じる勇気をもつのか?
その覚悟を持て
自由の存続と繁栄を守れ
そのためにあなたが国に尽くせ
ケネディの演説を思い出せと
監督のそのようなメッセージが公開後30年の時を超えて伝わって来るのです
本作の公開は1989年12月
その半年後にあの天安門事件が起きていたのです
中国に天安門事件の映画はありますか?
中国人が自らその事件を批判し、反省する映画を製作できるのでしょうか?
私達も天安門事件が無かったことのようにして、見なかったように振る舞い、経済的な損得を優先させてきた罪があります
主人公のロンが戦友を誤射して殺してしまったことを戦友の両親に打ち明ける勇気が無かったように
ベトナムの村人を誤って殺戮したことを隠していたように
そのツケがいま回ってきたのです
7月4日に生まれてとは、アメリカとは何かを問うているのです
自由と民主主義の国とは何か
いまなすべきことは何か?
日本人はどちらを選ぶのか?
それを問うているのです
無関係ではありません
今現在の日本人の私達の問題なのです