地獄のモーテルのレビュー・感想・評価
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『サイコ』をもっとカルトにした感じ
チェーンソーやら屠殺場やら人間農園やら、サイコパスには違いないが、B級感満載なため、カルト的な楽しみしか出来ない。ホラーではあるものの、登場人物の演技が台詞ボー読みのため全く怖くない作品。
ドライブ中のバイカーカップルを罠にかけて、男が即死、女性の方が瀕死ではあるものの、モーテルのオーナー、ビンセントが助けることになった。恋人を失ったテリー(ニーナ・アクセルロッド)は親身になってくれたビンセント(ロリー・カルホーン)とその妹アイダ(ナンシー・パーソンズ)になついてしまい、兄弟でもある保安官ブルース(ポール・リンク)と恋仲になっていく。
とにかくサイコパスの兄妹が経営するモーテルHELLOの看板の“O”の文字が点滅して消えかかってるために、HELL(地獄)となるのが楽しい。屠殺場で自家燻製ソーセージを作り、泊まった客に売っているのだが、豚だけではなく人肉をも混入させている悍ましい内容なのです。罠にかけた旅人たちを気絶させ、畑に植えている光景も笑っていいのやらどうなのか・・・。
そんなホラーな内容なのに、テリーは保安官とデートを楽しみつつ、ビンセントに惹かれていってしまうというプロット。おいおい、そいつは猟奇殺人鬼だぞと思いつつ、何も知らないブルースも親密度を増して、馬鹿っぷりを発揮する。豚の被り物でカルト全開にしても怖くないし、こうした一途な恋愛によって人間の愚かさ可笑しさを炸裂させている。
怖さも面白さもない映画なのに、なぜだかもう一度観てもいいと思わせるところがカルトたる所以だろうか、被害者側なのに能天気な娘に魅力を感じてしまう不思議な作品でもある。
【2019年ケーブルテレビにて】
レイドバックなブラック・コメディ
カリフォルニア州グレインヴィル郊外でモーテルを営むビンセントとアイダ兄妹。彼らの自慢は、最高の味と評判のベーコンを始めとした薫製肉だが、その材料として使用されていたのは豚肉だけではなく…。
一応カルトな人気を誇るというホラー映画である。しかもカンニバリズムという「タブー」を扱っている。テーマがテーマだけに、シリアスに描くと重苦しくなるので、ブラック・コメディとして作られている。しかし、監督がケヴィン・コナーさんでは…。この人は『地底王国』でコメディタッチはダメなところを暴露していたのに、懲りてなかったのだろうか?結果としてホラーとしてもコメディとしても中途半端な仕上がりに。
全編何だかのんびりと弛緩した、いかにも'70年代風の(公開は'80年だが)レイドバックしたムードのなか物語が展開するので、本来ショッキングかつグロテスクな見せ場となるシーンも迫力に欠ける。「食材」となる旅行者やモーテルの客を、菜園で北京ダックさながら首だけ出して土中に埋めた状態で「栽培」し、収穫する時は首にロープを巻き付けてトラクターで一気に引っこ抜いたり、切断された人体の一部が散乱する調理場が映っても、ほとんど恐怖感はおろか不快感もない。(イタリア製食人映画とは大違い。)
まあ、チェーンソーの本家本元(?)『悪魔のいけにえ2』に先んじること6年前に、チェーンソーによるチャンバラをやっていたクライマックスは、ビンセントを演じたロリー・カルホーンの高笑いの不気味さもあって、ホラーらしい「狂気」は感じさせてはくれるのだが…。(あの豚のマスクはレザーフェイスへのアンチテーゼだったのか?!どうでもいいけど。)
そんな訳でホラーとしてはかなり物足りない。が、いっそコメディとして見れば、抱腹絶倒とまではいかぬまでも、個人的には結構笑わせてくれたことも事実。随所にウケを狙ったと思しきシーンはあるのだが、それが意図的なものか、計算外のものなのか判然としなかったのだが、ラストで瀕死のビンセントが言い残す一言で、確信犯だったのだとようやく理解できた。中でも一番くだらなくて笑えたのは、兄妹の末弟にあたる保安官のブルース(ポール・リンク)がパトカーの中でエロ本を眺めていると、牧師(『アメリカン・グラフィティ』でおなじみの人気DJウルフマン・ジャック)に見つかり没収されてしまう。直後に場面が変わり、モーテルではアイダ(ナンシー・パーソンズ)が全く同じエロ本の同じページを眺めている…。それのどこがおかしい?と言われても困るが、まあ、人それぞれに色んな楽しみ方が出来るあたり、いかにも「カルト映画」らしいと言えるのでは…。決して『悪魔のいけにえ』のような「伝説」にはなれないとしても。
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