劇場公開日 2020年9月4日

「古き良きアメリカの良心を描いた名作」シェーン Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0古き良きアメリカの良心を描いた名作

2024年9月14日
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感想

1860年代後半、南北戦争後、西部開拓時代末期のワイオミング西部地域。緑豊かな大地と豊富な水源がある土地をネイティブ・アメリカンのシャイアン族との闘争により、多大な犠牲者を出しながらも広大な土地を占拠する事に成功し、独占的専有を主張していた牧童主であるライカー兄弟とその一味。対して新天地を求めて数家族で移住してきた開拓者達の間で土地の占有権を巡って争いが起きていた。
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開拓移住者であるジョー・スターレットは荒れ地ではあるが、小川が流れ、開墾次第では農作物や牧畜が可能な理想の地に辿り着き、妻のマリアンと一人息子のジョーイと3人で暮らしている。

ある日、南から一人の男が馬に乗りスターレットの家を横切る。男は北に行くという。そこに突然畑の畝を馬で踏み付けにしてライカー一味が現れ、警告と称し脅しをかけて来る。唯ならぬ雰囲気の中、男はスターレットの友人と言いライカー一味に対峙する。只者ならない男の雰囲気を感じ取りその場は立ち去るライカー達。

スターレットはライカーの仲間であると誤解した事を謝罪し、男を夕食に誘う。男の名はシェーン。少しの物音にも敏感な反応を示すシェーン。流れ者のガンマンである事を悟るスターレットとマリアン。だがジョーイだけは初めて出会う西部のガンマンに興味が尽きず憧れと尊敬の眼差しを持って接する。

シェーンは食事の礼として家の庭先に残っている大木の切り株を抜こうと斧を振り始める。スターレットは感心して自分も斧を振り始める。二人の労作は続く。マリアンは馬で株を引けばと提案するが、スターレットは「此奴(切株)と格闘してかれこれ二年になる。人の力と汗を以て勝利(切株を倒す事)を手にしたい。」二人は力を合わせて最後には株を抜き倒す事に成功する。こうしてシェーンはスターレット家で使用人として働く事になる。

ライカー一味は相変わらず開拓者達に嫌がらせをする。隣地に住むアーニーは育てていた収穫前の小麦畑に多数の牛を嗾けられ一晩で全てが破壊されてしまい、希望が無くなりこの土地を離れたいという。スターレットはアーニーを宥め今晩、開拓者全員を集めて自宅で会議をすると言い出す。シェーンもまた作業着をグラフトンの雑貨店に買い物に出掛けた時に新品の服を酒場にいた一味の一人クリスに難癖を付けられ汚される。シェーンは黙ったまま無言で立ち去る。

会議の席でシェーンは開拓者全員を紹介される。元南軍のトーリー、元北軍でハモニカが得意なヤング、アーニー、ルイス、エド、ジョンソンの6人である。ルイスはシェーンが酒場で罵倒されても沈黙したままの臆病者だと町中の人々が噂している事を皆に話す。会議の席を外し降り頻る雨の中佇むシェーン。会議では全員が一致してライカー一味に立ち向かう事を確認する。

自衛手段として翌週土曜日に開拓者全員が家族を連れ添って買い物に出かける。そこでシェーンはクリスにされた前回の仕置に対して仕返しを行い、激しい乱闘となる。開拓者達は初めは傍観するだけであったが最初は1対1であった喧嘩相手がライカーのスカウトをシェーンが断ったため6対1にまで増える。卑怯なやり方に怒りを感じたスターレットが加わり大乱闘に。酒場のオーナーでもあるグラフトン本人が仲裁に入り、スターレット側の勝利とした。スターレットは酒場を破壊した修理代は自分達で弁償するとライカー達に啖呵を切り去っていく。事の成り行きを最初から全て見ていたジョーイはシェーンの勇敢な行動に心酔する。更に銃の撃ち方を教えてもらい間近でシェーンの銃捌きを見てその早技に感嘆する。

ライカーは開拓者達との全面的な抗争を決意。シャイアンに銃の腕の立つ用心棒を探し求め雇う事にする。数日後スゴ腕の二丁拳銃の使い手であり名が知られている黒帽子と黒ベストのガンマン、ジャック・ウィルソンが現れる。

独立記念日には付近の住民はお祭り騒ぎとなる。その最中、酒場でライカー、ウィルソン達に酒を買いに来たトーリーが捲し立てる。「お前達のおかげでアーニーは出て行った。お前達には負けない。」開拓者達の集まる場に戻りトーリーは黒帽子のウィルソンを見た話をする。その夜スターレットとシェーンの所にライカーとウィルソンは現れ、牧童仕事の勧誘をするがスターレットは話を断る。

ある日開拓者のトーリーとジョンソンがクラフトンの店に買出しに行った時に悲劇がおきる。ウィルソンにトーリーが声をかけられ、南軍の事を馬鹿にされ銃を抜いたトーリーが酒場の前で撃ち殺されてしまったのだ。ライカーはこれで開拓者達は怖れをなして土地を出ていくと確信する。

トーリーの遺体はジョンソンが馬に乗せて開拓者の家に触れ回りスターレットの家まで運ぶ。スターレットは家族にトーリーの死を知らせて欲しいとマリアンに依頼、ジョンソンは遺体を家族に運ぶ。

グラフトンの雑貨店と酒場が見える近隣の高台に墓地がある。トーリーは他の開拓者家族全員に見守られ葬られる。葬儀はしめやかに行われる。葬儀後、ルイスとジョンソンはこの土地を離れる事をスターレットにつたえるが、シェーンは「町を出るべきでは無い。何故町に残るべきなのか?町に残るべき理由。それは愛する者のためだ。家族の事だよ。妻。子供達。息子。娘。彼らの将来の為に。君たち大人が未来を切り拓くのだ。」

スターレットも皆を説得する。
「その通りだ。ここは誰もが自由に暮らせる開拓地なのだから。ライカー達に土地を追われてなるものか!奴等が牛を守るなら俺たちは家族を守る。」

しかし、この地を去ろうとしたルイスの家がライカー一味に放火され焼かれる。

スターレットは更に皆を説得する「また皆で家を建て直せば良い。協力は惜しまない。それはこの場所に残る自分達の問題でもあるから。」話を聞いた周りの人々も口々に賛同し家の再建の手伝いを申し出る。

「それでは火を消す為に家に戻ろう!」ルイスと援助を申し出た者達がルイスの家に向かい消火活動を開始する。遠目からルイス達の行動を見ていたライカーはスターレットの差し金と断定してスターレット殺害を企てる。

ライカーの弟モーガンはライカーに依頼されスターレットの家を訪れ「兄貴がグラフトンの店で待っている。冷静に話し合おう」と伝える。その事に対してスターレットは「必ず行く」と返事をする。

更にライカーの所をクビになったクリスが馬小屋のシェーンを訪ね、スターレットは罠に嵌められる事を伝える。クリスはヤクザ家業から足を洗って堅気に戻るとシェーン伝え去っていった。

スターレットがグラフトンの店に行く準備をしている。嘆き悲しむマリアン。外ではシェーンが銃を着けて出掛ける準備をしている。

シェーンはスターレットに、
「俺に任せろ。ライカーは倒せたとしてもウィルソンは無理だ。」

スターレットは「必ず倒す。忠告には感謝する。」とし、話を受け入れない。必死に二人を止めようするマリアン。
シェーン「役不足だ。俺が行く。」と言うと、

スターレットは「ここで俺と闘おうと言うのか!」

シェーン「お前次第だ。」

シェーンにスターレットが突然殴り掛かり、悲鳴をあげるマリアン。

「やめなさい!」マリアンの叫びも虚しく殴り合う二人。シェーンは銃の握手でスターレットの頭を殴り気絶させる。ジョーイはシェーンに向かって「大嫌いだ!」と叫ぶ。佇むシェーン。

シェーンはスターレットの様子を見に行き、「介抱すればその内に気がつく。誰も彼を責めたりしないよ。」とマリアンに伝える。

グラフトンの店に向かおうとするシェーンをマリアンが呼び止める。

「ガンファイトはもう卒業したんじゃないの?」

 「気が変わった。」

「私のためなの?」

 「君たち夫婦とジョーイのためだ。」

「二度と会えないのね。」

 「ああ、これでお別れだ。ジョーに悪かったと伝
 言を伝えてくれ。」

「必要ないわ。待って。」
見つめ合うシェーンとマリアン。

そして握手をする二人。「どうか。命を大切に...。」

馬に乗りスターレット家を後にするシェーン。
「シェーン!ごめんよ!」ジョーイか叫ぶも声は届かない。シェーンを徒歩で追いかけるジョーイと愛犬。グラフトンの店の酒場に到着するシェーン。

酒場の格子扉を押し開けるシェーン。店内には一番奥のテーブルにライカーが座り、右手前のテーブルにウィルソンが一人で佇む。カウンターにはバーテンのウィル。カウンターを背にしてシェーンが立つ。その間ジョーイは愛犬と共に到着し店の外から見守る。

シェーンがライカーに話し掛ける。

「話を聞きに来た。」
 「お前には用は無い。スターレットはどうした?」
「俺が相手だ。」
 「お前と争うつもりはない。出て行け!」

2階のドアからシェーンを狙うライフルの銃口が躙り出る。

「お前は長生きし過ぎた。お前の時代はもう終わっている。」

 「お前はどうなんだシェーン。」

「俺は(時代遅れの男と)自覚している。」

 「お互い銃を手放して野良仕事に精出すか?」

「まだその時ではない。あんたの仲間に用がある。」
と、ウィルソンを睨むシェーン。

 「図に乗るな。」
と言いながら立ち上がるウィルソン。

殺気を感じ店から出て行く二人の男達と酒場の犬。
 「相手はお前じゃない」

「違ったか?」

 「残念だがな。」とウィルソン。

 「もう後戻りは出来んぞ。シェーン。ウィル!
 お前が証人だ。」とライカーが言う。

「お前がウィルソンか。噂は聞いた。」とシェーン。
 「どんな噂だ?」仁王立ちのウィルソン。

シェーン、カウンターを離れ仁王立ちになる。
「卑劣なヤンキー野郎だってな。」

 「抜けよ!」
と、ウィルソンが銃を抜くや否や、シェーンの銃口から火を吹く銃弾2発!後ろにふっ飛び酒樽に埋まり動かないウィルソン。さらに3発目は威嚇発射したライカーに向けて発射。ライカーは絶命した。
ライカーの死を確認するシェーン。拳銃を人差し指で回転させてホルダーに収める。

ライカーに背を向け店を出ようととした瞬間!
ジョーイが叫ぶ「シェーン!後ろの上危ない!」

2階のライフルから発射、身を避けながら応戦するシェーン。左腕を負傷するシェーン。撃たれたモーガンも絶命した。無残な死体を後にして酒場を出るシェーン。

「シェーン!思った通りだ。勝つと信じていたよ。」
全てを見ていたジョーイが訊ねる。

シェーンは人を一旦殺めた以上、後戻りは出来ない事。人生に人殺しの烙印を押されてしまう事。これは自分の性分なのだと。真っ当な人に一度は成ろうとしたが変われなかった。心配はいらないもう銃の世界はこの場所では終わらせた。スターレット家には帰らない。強く逞しい男になれ。親孝行をしろ。そして両親を大切に。最後に頭を撫でてジョーイに言い聞かせる。「シェーン。約束するよ。」

振り返る事無く馬に乗り去っていく男。
「 Shaneー!Come Backー!」

墓場を越える馬影。傷付いた流れ者の運命は厳しく儚い。
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監督ジョージ・スティーブンスの考えるアメリカ人の良心とは何かが脚本や映像の端々に至るまで見事に反映され、創り上げている西部劇の不朽の名作。

1950年代頃までは普通にあったアメリカの国民性を感じる事ができる内容となっている。現在は社会的ダイバーシティが進んだので歴史的な感性論となってしまった。それでも監督の想う開拓者魂の感性は現在もアメリカ国民に受け継がれ、生き続けている。

1974年頃 渋谷東急

⭐️5

Moi